本家「虹の彼方に」を聞いてみる

■オズの魔法使■

ときたまテレビでも放送されるミュージカル映画の古典「オズの魔法使」だが,使用される素材が劣化しているせいか,画質ボケボケの古くさい作品と思っている人がいるかもしれない。なにしろ1939年作だ。誕生からすでに60年である。

しかし,ハリウッドでは名作の劣化したフィルムを復元する作業も続けられているようで,この作品にしてもLDでは実に鮮やかな画質と色彩で楽しむことができる。けっこうなことである。こういう点はハリウッドの懐の深さか。まあその結果得られるはずの新たな利益を見越してのことではあろうが。

さて「オズの魔法使」とくれば何といっても「虹の彼方に(Over the Rainbow)」である。この曲が生まれるに至る経緯についてはさまざまな伝説が残されているが,資料の孫引きをしてもつまらないのでうんちくについては他の人に譲る。

ただ映画史上に名高いこの名曲の登場するシーンだけはおさえておきたい。究極のオズ(THE ULTIMATE OZ)としてリリースされたまさに決定版ともいうべきLD「スペシャルコレクション オズの魔法使」ではディスク1のサイド1,チャプター4で聞ける。うーん,名曲。

ところで,日本でも昔,かなりモダンなアレンジによる「オズ」がテレビシリーズとして放送されていた。当時バラエティなどにちょこちょこと出ていたシェリーという娘がドロシー役だったのだが,実を言えば僕の「虹の彼方に」原体験はこの日本のテレビシリーズ版であった。由緒正しいオズのファンから見れば邪道なんだろうなあ,こういうの。でもけっこう面白かったんだよ。

話を"本家"に戻そう。このジュディ・ガーランドが歌うあまりにも有名なシーン,実はモノクロである。ミュージカルなんか興味ないよという人にはますます古くさいと言われそうだ。しかし本編をご覧になった方ならご存じのとおり,この映画はドロシーが竜巻に飛ばされてオズの国に着いてから目の覚めるような美しい色彩であふれかえる。モノクロからカラーに変わる瞬間の鮮やかさはため息ものであって,きっと当時の観客たちもここでどよめいたんだろうなあ,という美しさだ。

だからこそ,ボケボケのテレビ放映版などでオズを見た気にならないでほしいのである。ぜひ最新版LDでその美しい世界を堪能してほしい。ジュディ・ガーランドのドロシーは僕などにはどうも田舎臭い感じが過ぎる気がしていたのだが,映画を見終わるころには彼女以外のドロシーはあり得ないと納得できる。スターになる娘はそういうものか。

なお邦題は「オズの魔法使い」ではなく「オズの魔法使」となっている。

スペシャルコレクション オズの魔法使 PILF-2281
発売元(株)パイオニアLDC