雲海の空中戦

■風の谷のナウシカ■

このサイトを始めてもうずいぶんたつのだが,映画「風の谷のナウシカ」について触れるのはこれが初めて。特撮とアニメに偏向している(らしい)我がページにしては意外な出遅れだ。今まで所有していたのが最初期のLD版だったせいだろうか。しかし昨秋(今は2004年1月)ついにDVDもリリースされてまずはめでたしである。

ナウシカは仕様こそ古いけど宮崎アニメの中では真打ちともいうべきタイトルなので「やれやれ,これでひと区切り」と思った方も少なくないと思う。これがないとコレクションの座り具合がどうも落ち着かない感じだったもんねえ。もっと早く出してほしかったなあ。

内容については今さらあれこれ言う必要もないね。今や世界に冠たる日本のアニメにとって,ナウシカ以前と以後という節目をつけられるほどの画期的な作品である。この年1984年には押井守の「うる星やつら2/ビューティフルドリーマー」も登場している。アニメ界にとっては意義深い年だった。

ナウシカ公開時,僕も期待して早朝から劇場に駆けつけたのだが,到着してみると延々と続く長蛇の列。ありゃーこれじゃとても無理とあきらめて同時期に公開中の「さよならジュピター」を見たのだが,こちらはがら空き。がら空きにふさわしい出来だったので納得したけどね。映画に対しては基本的に肯定的な僕にだって許せない作品はあるのだ。でもこれはまあ別の話。

話を戻そう。後日,あらためて劇場にもぐり込み(立ち見だった)ようやくナウシカを見たのだが,もう冒頭の動くナウシカと久石譲のあのメインテーマだけで胸が熱くなってしまった。うれしかったなあ。

原作の凄みと深さに較べるといささかこじんまりとしているけど,僕はこの映画版も大好きである。原作コミックを読んでいるときも頭の中ではちゃんと島本須美嬢の声でセリフが読めるくらいだ。

現代日本アニメのオリジンともいうべき作品なので名場面も各所にあるのだが,僕自身のお気に入りは後半,ペジテとトルメキアの船の空中戦からナウシカが脱出するあたりのダイナミックなアクションのシーンだ。手でさわれそうな質感の雲が水のように揺れ,はじけ,流れる中,ナウシカのメーヴェとトルメキアのコルベットが繰り広げるほんの数十秒のシーンなのだが,この立体感や飛翔感が画期的だった。

DVDではとりあえずチャプター18の87分08秒あたりから。公開から20年。LD時代にずいぶん繰り返し見たものだが,DVDで再見するといろいろ思い出されて感慨深い。これ以後,宮崎アニメの表現はずいぶんと浸透したが,こうして本家本元に接すると「やっぱ違うねえ」と何が違うのかようわからんくせに何やら深々と納得してしまうのである。

ちなみに,映画公開からビデオリリースまでの間隔は時代によって長かったり短かったりするのだが,このナウシカはずいぶん早い時期に出たと記憶している。当時まだユーザーの少なかったLDがこの年の4月末には発売になっているのだ。僕はその日を待ちかねて買いに走ったのだが,最初,リリースの広告を雑誌で見つけたときには信じられなくて何度も目をぱちくりさせたものだ。

まだ毎月わずかなタイトルしかリリースされなかった時代のビッグタイトルだったのである。そのLDが今はもう退場しているのだから20年が長いのか短いのか,いささか複雑ではある。

風の谷のナウシカ VWDZ8006
発売元(株)ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント