山口百恵がマイクを置いたとき

■山口百恵/伝説から神話へ■

有名人の引き際にはいろんなエピソードがつきものだ。「普通の女の子になりたい」だの「巨人軍は永遠に不滅です」など名セリフも多い。後々までパロディになったりするのもそれだけ印象的だったということだろう。

そこで昭和末期を飾る大スター山口百恵だ。

彼女の最後のコンサート(日本武道館)はいまだに現役商品である。これが収録されたのは1980年の10月で今は98年10月。おいおい,もう18年も前じゃないか。月日のたつのは早いものである。最近トヨタのCMで山口百恵をまねている子はいくつなんだろう?下手すると百恵引退後に生まれてたりするんじゃないかね〜。

それはともかくこのLD,今見ても充実の逸品である。山口百恵って実はそれほど好みではなかったんだけど,結婚/引退が決まってからぐんぐん美しくなる彼女に惹かれて僕は山口百恵現役時代最終世代のファンになった。このコンサートで見る彼女は数ある主演映画のどれよりも美しく,完成されている。ピークで退く美意識もなるほどと納得できる輝きである。スターという言葉にふさわしい存在感がすばらしい。

よく,時代と寝た女などと評されていた彼女だが,この圧倒的なステージを見るとこんな子はもう現れないだろうなと素直に思う。スケールとグレードがすごい。若いころ友人に誘われて1度だけ彼女のコンサートに行ったことがあるのだが,そのとき感じた大物の貫禄みたいな感じは本物だったとわかる。ちなみにその時は新宿コマだったんだけど劇場に続く老若男女の長蛇の列がすべて彼女のコンサートの客だと知ってそのファン層の広さに驚いたものだ。コンサートではなくリサイタルと呼んでいたけどね。どう違うんだろう?

さて,山口百恵のラストコンサートといえば,最後にステージにマイクを置いて去る,というあの有名なシーンである。LDではサイド3チャプター5の34分55秒,希代のスター山口百恵は万感込めてマイクを置くのである。これを見ることは昭和史の1ページに立ち会うことに等しい。心して接するべし。

「山口百恵 伝説から神話へ」タイトルもすごいが中身も立派。昔を知る人も知らぬ人も1度は体験されたし。

山口百恵 伝説から神話へ 完全リミックス版 SRLM424-5
発売元(株)Sony Music Entertainment