トイレからの脱出

■ブラボー火星人2000■

原題には付いてないけど邦題には2000という数字が付いている「ブラボー火星人2000」はつまりリメイク作品ということだ。元々は60年代の人気テレビシリーズで,僕も日本で放映されていたやつを小さいころに見た覚えがある。

地球に落ちてきたかなりいけてる火星人マーティン。彼に居候されてドタバタ騒ぎに巻き込まれる主人公をめぐるコメディだけど,70年代初頭あたりまではこういうアメリカ産の楽しいテレビシリーズがたくさん放送されていたある意味黄金時代だった。今もたくさんのドラマが作られてはいるけどあの当時ののどかで平和な雰囲気というのはもう二度と再現できないだろう。懐かしんでいるわけではなく,人類にももっと素朴な時代があったということだ。

こうしたリメイクのキモはもう一にも二にもどれだけかつての人気シリーズの雰囲気を現代風に再現できるかというところにかかっている。昔のファンの思い出は歳月を経て一段と美化されているのでこれをクリアするのは至難の業だ。だからたいていのリメイクはそこそこの水準に達していても結局は厳しい点を付けられたりする。ま,これは仕方のないことなんだよね。

僕自身のこのシリーズに関しての記憶はほとんど消え薄れているのであまり昔にこだわらずに見ることができた。楽しい出来だと思うよ。

むしろディズニー(ブエナビスタ)あるいはアメリカ映画の大らかな娯楽路線はこういう世界でこそ生きるんじゃないかなと思ったな。現代の映像技術というのはこうした呑気な映画をさりげなくサポートするのに最適だし,台詞(吹替えの方だけど)を聞いていると現代の笑いのネタもさらっと紛れ込んでて時々ニヤリとしてしまう。テレビシリーズの記憶がほとんどないのでこの吹替えが当時のテイストに近いのかどうかはわからないけど,ベテランの青野武氏の声はこういう作品にぴったり。

途中,火星人捕獲を目指す一団との追っかけっこのシーンで主人公たちがミニサイズの車で下水管の中を逃亡し,家庭のトイレの中から脱出するシーンがあるんだけど,ここの「スリル」には笑った。その理由は各自その目でご確認あれ。DVDではチャプター15の後半,時間にして67分58秒あたりから。ここでこんな音楽使っていいのかなあ。

ところでこの映画には僕の好きなダリル・ハンナが出ている。これは1999年の作品だけど「ブレードランナー」からすると彼女もずいぶんな歳になったはずなのにすんごく若々しくてチャーミングなヒロインっぷり。いやーうれしかったなあ。彼女はレプリカントをやり人魚をやり巨大主婦をやり,で人間以外?の役がけっこう回ってくるんだけど,今回もやってくれた。あはあはと笑って見ていたよ。

テレビシリーズの初代マーティンおじさんに対するオマージュも忘れない作りに「よしよし」と言っておこうかね。こういうのこそテレビシリーズでやってほしいなと思う。

ブラボー火星人2000 VWDS4356
発売元(株)ブエナ ビスタ ホーム エンタテイメント