ジャネット・リン 不滅の微笑

■世界フィギュア選手権■

もうすぐ長野オリンピック(今日は1月6日)だが,どれだけ時代が移ろうとも僕の中では冬季オリンピック=ジャネット・リンである。72年の札幌オリンピック最高の人気選手であり,まだ規定優先のあの時代にフィギュアスケートの数十年先の姿(つまり今のフリー中心のフィギュアのスタイルだ)を先取りしていた天才スケーターである。

何しろスケーターとしての天才と輝くような美貌を兼ね備えているのであるから競技の結果は銅メダルであったにもかかわらず他の選手はすべて霞んでしまった。札幌は彼女のためだけの大会であったと言ってもいい。

日本での彼女の愛され方はちょうどオードリー・ヘプバーンのそれによく似ている。当時ハイティーンの彼女の笑顔は美貌というよりは可愛いと言った方がいいのかもしれないが,日本の全国民が彼女のファンになってしまっていたのである。

残念ながらこの映像ソフト全盛の時代にあってなぜかフィギュアスケートのLDはまれである。今カタログに載っているものは1点もないと思う。しかし丹念に探せば「世界フィギュアスケート選手権大会 銀盤を彩った名選手たち」という貴重なLDを見つけることも不可能ではないだろう。

これは77年の世界フィギュア東京大会から85年再び東京での世界フィギュアまでの間に活躍した名スケーターたちの演技を収めた逸品である。今となってはその価値は計り知れない。なぜならこのLDのプロローグにはジャネット・リンの姿が収められているからである。

冒頭のわずか1分ほどの短い映像であるが,真に銀盤の妖精の名にふさわしい彼女の貴重な映像である。かつてのファンなら足を棒にしてでも探し出す値打ちがある。ジャケットもジャネット・リンである。もう何も言うことはない。他のすべての選手はいずれは忘れ去られるが,彼女だけは伝説の中に生き続けるのだ。

ちなみにこのLDのエピローグには次代のホープと期待される一人の少女の姿が収録されている。氷上でぴょんぴょんと跳ね,くるくると回るのは若い若い伊藤みどりである。そんな時代のソフトなのである。国際スケート連盟公認。

余談だが,かつてTBS系(だったと思うがちょっと自信ない)で「土曜デポルテ」というスポーツ情報バラエティのはしりのような番組があった。

土曜朝の生放送でありながらあの青江三奈!がセーター姿でゲスト出演をして進行をつとめる(スポーツ番組なんだよ!)などという破天荒な番組であった。しかしこの番組のあっぱれなところは札幌五輪後日本のアイドルとなったジャネット・リンをゲストに招き,番組のために特に彼女の滑りを収録してオンエアしたことである。家庭用ビデオなんてない時代である。今思えば実に惜しい話である。

そのジャネット・リンが長野オリンピックを前にマクドナルドの協賛CMに登場している。ご覧になった方も多いだろう。

感動である。実年齢では中年のおばさんのはずなのにかつてと変わらぬチャーミングな笑顔。この歳月を経てなおあの笑顔が健在であるというのは信じがたい。あのCMを見る度に感動で胸が熱くなってしまう。

大会に合わせて来日の話もあるらしいが,今度こそは万難を排してビデオを回すつもりである。

世界フィギュアスケート選手権大会 88TX-1
発売元(株)東京放送/徳間コミュニケーションズ