中山美穂のお元気ですかーーーー

■Love Letter■

おお,邦画も見通し明るいぞ!岩井俊二監督の「Love Letter」を見たときの喜びというか感動は今でも鮮明に覚えている。いや〜よい映画だったな〜。

劇場で未見だったのでLDが出たときに速攻で買ったのだが,その夜の静かな充実感というのは久々に感じる心地よさだった。普段はそんなことしないのだが,このときは親しい友人に思わずメールで感動を書き送ったものだ。

なんといっても中山美穂がすばらしい。それまで僕の中での中山美穂という名はただのアイドルのひとりに過ぎなかった(ファンでも何でもなかった)のだが,この夜一挙に特等席に昇格した。それ以来,ビールのCMだろうがパソコンのCMだろうが,はたまた化粧品のCMだろうがつい目がいってしまう自分に苦笑している。

雪の中に横たわる彼女の横顔から始まるヨーロッパ映画のようなオープニング。ここからすでに違う。静かに鳴り始める音楽がまたすばらしく繊細で美しいので,邦画も新しい時代に入ったんだなと感じさせてくれる。

ご覧になった方はおわかりのとおり,静かな映画である。それだけにクライマックスでヒロインが叫ぶシーンには泣けた。いつもうつむいていた彼女がありったけの思いを込めて悲しみと決別しようとする瞬間だ。LDではサイド2の44分50秒だが,その1分くらい前から含めるべきだろうな。僕はこのとき,中山美穂には主演女優賞のありったけを10年分くらいまとめてあげてもいいんじゃないかとまで思ったものだ。

日本版「ふたりのベロニカ」(こちらも必見)などと言われた本作だが,見るたびに新しい発見があり,その細やかな描写に感動する。冒頭の雪の中に横たわる彼女が息を止めていたのはもしや……などと思い始めたのも最近になってからだ。

少年の樹が少女の樹に預けた本は中学生が読むには難解すぎるが,彼の背伸びした思いが伝わってくる。むろんラストの図書カードの"あれ"への伏線としてこそばゆいくらい最高のタイトルだけど。

ともあれ,これを買わずして何を買うのだという映画ファン,映像コレクター必携の作品。「Love Letter」なしのビデオコレクションなど自分の目が節穴であることを公言しているようなものである。さあ,買ってきたまえ。

Love Letter KILF 5116
発売元(株)フジテレビジョン/キングレコード