笑うウルトラマン

■ウルトラマン■

最近DVDでのリリースが始まった初代「ウルトラマン」,思い入れのある方も多いだろう。既に製作から30年以上経っている(これを書いているのは2000年2月)わけだが,この番組が当時の子供たち,つまり今はそのなれの果てである僕たちに与えたショックは並大抵のものではなかった。

圧倒的な力で怪獣たちと戦う銀色の巨人の出現は僕たちをテレビの前に釘付けにした。カルチャーショックなんて言葉は当時まだ一般的ではなかったが,僕たちが感じていたのはまさにそれだったのだ。もっとも,当時うちのテレビはまだ白黒だったけどね。

さて,この栄光の初代ウルトラマンは同種ヒーローたちの始祖だけあって記憶に残るエピソードも数多い。ストーリーだけでなく,ちょっとしたシーンが永く忘れられないトラウマ?になっている人もいるだろう。たぶんしゃべり出すと止まらなくなるお父さんも少なくないはずだ。僕自身もいろんな場面が記憶に残っているのだが,後にLDを入手するまで「あれは何だったんだろうな?」と思い続けてきたシーンがひとつあった。

それが笑うウルトラマンである。

誰もが知るとおり,ウルトラマンといえばあの「シュワッチ!」という独特の発声がある。あの声こそはウルトラマンの記憶を強烈に刻みつけた要素のひとつだと思うが,彼があの声で人語を話すことはなかった。あくまで戦いのかけ声,気合いのようなものだったからだ。

だが,彼は一度あの声で笑ったことがあるのだ。笑うウルトラマン!ビデオなき時代には確認しようもなかったが,今ならじっくり見分できる。第10話「謎の恐竜基地」の回である。ウルトラマンはジラースという怪獣と戦うのだが,この時の演出はちょっと変わっていて戦いのシーンを西部劇か時代劇の対決シーンのように描いている。そして余裕たっぷりのウルトラマンはジラースを投げ倒した後「ファッハッハッハッ」と笑うのである。

子供のころ見たこのシーンがなぜか忘れられず,数十年も後になって確認できたときは妙に気持ちよかったものだ。それで何がどうなるというものでもないが,長い間気になっていたことがはっきりするというのは精神衛生上たいへんによろしい。あ〜スッキリしたあ〜〜てなもんである。

僕が持っている旧LDボックス版ではディスク3のサイド1,チャプター4の48分06秒といったところ。うむ,やっぱりウルトラマンは笑っているぞ。

ちなみにこの回登場するジラースはゴジラの着ぐるみを流用したもので,戦い後半,ウルトラマン対ゴジラが実現しているのは有名な話。でも僕にとってはウルトラマンの笑い声が聞けたという点で忘れられないエピソードになっている。

ウルトラマン・メモリアルボックス BELL-551
発売元(株)バンダイビジュアル