マイ・フェア・レディのあのドレス

■マイ・フェア・レディ■

まだこのホームページを立ち上げる前のこと。どんなサイトにしようかとあれこれ考えていたのだが,その中に「マイ・フェア・レディ」でオードリーが着ていたあの有名なドレスについて図解で詳細に分析してみようというものがあった。アスコット競馬場のシーンに登場するアレである。

しかしこれはファッションに疎い中年男にはあまりにも無謀な企てであって,当然のことながら構想倒れになってしまった。まあ,身の程を知れということだね。だが,この映画が紹介されるとき必ず登場する(LD/DVDのジャケットにもなっている)あのドレスは映画史上最も有名なコスチュームのひとつではないだろうか。

そもそもこの映画を見たことがない人でさえ,あの衣装を着たオードリーの姿には見覚えがあるはずだ。白を基調に黒のストライプが絶妙のアクセントになっているドレスと華やかなあの帽子。ヒギンズ教授言うところの「Simple & Elegant」なあの衣装こそこの映画の顔とも言える。

「七年目の浮気」で地下鉄に舞うスカートが有名になったあのときのマリリン・モンローの姿と同じく,この衣装はオードリー・ヘプバーンを代表するイメージのひとつになっているのだ。

「マイ・フェア・レディ」といえば数々のミュージカルシーンはどれも名場面になっている。僕も「スペインの雨」から「踊り明かそう」へと続く一連のシーンは大好きなんだが,今回は本作を代表する「顔」としてこのドレスの登場シーンを選んでみた。

DVDではチャプター24の86分10秒あたりから。よく目にするスチルでは,あの豪奢な帽子とオードリーの顔と左胸元のリボンあたりまでが画面を占めているせいで,ものすごーく派手な印象がある。しかし全身をあらためて観察してみると,このドレス自体は美しいけど意外にシンプルなデザインだとわかる。

この映画の衣装デザイナー,セシル・ビートンの「『マイ・フェア・レディ』日記」によると,彼は元々舞台版のころからこのアスコットのシーンは白と黒のイメージでやりたいと考えていたそうだ。そう思って見ると,なるほどこの有名なドレスのデザインにもそれが反映されているのかもしれない。

余談だが,この衣装,日本のコミックやアニメにもよく登場した。ちょっとしたカットに描かれることも多い。自称映画好きのイラスト描きならこれは必修課題みたいなものかもしれない。僕も挑戦してみたことがあるが,あの帽子が難敵でなかなか上手く描けなかった。

ていねいなフィルムの修復作業のおかげで美しくよみがえった「マイ・フェア・レディ」だが,今は安価なDVDで所有できる時代だ,ぜひとも自分の目であの有名なドレスのディテイルを見分してほしい。

マイ・フェア・レディ DL-16668
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ