さあ,仮面をつけて!

■飛びだす冒険映画/赤影■

以前ツイ・ハーク監督の「スウォーズマン/女神伝説の章」を見たとき,その度外れな破天荒ぶりはどこかで見たことがあるような気がしたのだが,ああ,あれだとすぐに思い出したのが「仮面の忍者/赤影」である。

僕がまだ利発でかわいい小学生であったころ,テレビで人気を博していたのがこの「赤影」だ。横山光輝氏の原作は跡形もないほど大胆にアレンジされているが,とにかくやたら元気のいい作品で,再放送も延々とリピートされていたものだ。何がいいと言ってそのむちゃくちゃ破天荒で八方破れ,時代考証なんぞくそくらえというエンタテインメント指向が楽しかったのである。

でもって本放送終了後に劇場用として登場したのが「飛び出す冒険映画/赤影」だ。飛び出す,というところがミソ。つまりこれ3D映画なのである。昔,子供向け雑誌の付録などでけっこうおなじみだったあれだ。赤と青のセロファンを貼った立体メガネ?をかけて見ると絵が飛び出して見えるというやつね。

LDの解説によるとアナグリフ式という原理らしいのだけど,フィルム,つまり劇場用のスクリーンで見てこそ効果が出るものであって,テレビでは立体感が十分に出ないそうだ。LDではちゃんと立体メガネがおまけについてくるが効果のほどは解説どおりイマイチであった。

しかしまあこの作品はそんなところよりぶっ飛んだお話と奇天烈なキャラクターを楽しめばよいのだ。ケッサクだぞお。

映画全編が3Dなのではなく,見所のアクションシーンになると合図とともに3Dになるのだが,もうここが大笑い。何しろ敵方忍者と真っ向力比べをしている最中の赤影さんがいきなりこっちを見て

さあ,仮面をつけて!

と合図してくれるのである。それとともに画面には赤い仮面の絵が数秒現れて観客に立体メガネの装着を促してくれる。わははは,楽しいね〜。

そんなシーンは作中に4度あるのだが,とりあえずLDサイド1チャプター7の11分32秒を見てみよう。他にも白影のおじさんが「そろそろ仮面をつけた方がよかろう」などと言ってくれるのだ。牧冬吉さん当たり役だったなあ。

物語の方はテレビ第1シリーズのダイジェストみたいで,ストーリー的にあちこちつながらない部分とかもあるのだが,まあそれに文句を付けるような作品でもない。こんな野放図なドラマは今じゃ作れないが,そのぶっ飛んだエネルギーは敬意を払うに値すると思う。

そしてもうひとつ。このLD,今では表現上問題とされる映像,セリフに関しても断り書きを入れた上でそのまま収録しているのはあっぱれである。作中BGMも名曲が多いぞ。

飛び出す冒険映画/赤影 LSTD01278
発売元(株)東映/東映ビデオ