レナウンイエイエの懐かしいCMを見る

■ロバート・エイブルの世界■

パイオニア(今のLDC)がひところ出していたいろいろなドキュメンタリーや映像資料的なLDは,映像コレクターには実においしいタイトルが並んでいた。商売としては苦しかったかもしれないが,LDの盟主としての責任感を感じさせる好企画がいくつもあった。

特に「映像の先駆者」は映像表現分野でのパイオニアたちの作品を集めた貴重でぜいたくな内容であり,もし中古で見つけたら絶対に買っておいて損のないシリーズである。

中でも「ロバート・エイブルの世界」はよくぞ実現してくれたとしか言いようがないめくるめく光と色彩のコレクションである。コマーシャルの映像を恒久的に変えてしまったといわれる彼の多彩な作品群が一挙に入手できるのは感動的ですらある。月並みな表現だがポップでカラフル,光り輝くイメージの洪水,そして華麗な夢の世界といった感じの彼の作品はCMの域を越えて訴えかけてくる魅力がある。

彼の映像はとにかく華麗のひとことだが,最近一般的に使われる3DやモーフィングなどのCG技術とは少し違う。なにしろこのLDに収録されているのは70年代から80年代にかけての作品群なのだ。印象としては,当時のCG技術とビデオアートやアニメーションの合成技術などを駆使した総合力の産物であろうか。特に初期の作品はCGで何でも作り出せてしまう今時のCMでは見られないタイプの映像であり,ポップアートとしての楽しさにもあふれている。

彼は日本企業のCMも多数手がけているが,レナウンイエイエのものはCMソングも懐かしく「あ〜これかあ」と思い出す人もいるかもしれない。サイド1のチャプター8に収録されている。ちなみにこのシリーズはその企画の性質上すべてCAVディスク仕様である。万華鏡のように華麗に変化する光と色彩は,エイブルのCMの特徴がよく出たイントロ部分においてもっとも美しく,かっこいい。これで今から20年も前の作品(78年)なのだ。

おなじみのあのCMソングはいろんな歌手が歌っているが,このバージョンでは誰なんだろう。最初はちょっとアン・ルイスのようにも聞こえたけど,今聞き直すとやはり違うね。残念ながらそこまでの情報は同封の資料にも記されていなかった。

映像コレクター予備軍の,まずは基礎教養として必携の1枚である。

ロバート・エイブルの世界 SS098-0047
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア