星々の果てのBirthday Song

■伝説巨神イデオン■

現在がはたして何度目のアニメブームなのか知らないが,僕らのようなロートルにはヤマトやファーストガンダムの時代こそがまぶしかった。劇場用作品のクオリティはまだまだだったが,とにかく記憶に焼き付いているのはあのころの作品群である。

さて,今も意欲的な富野由悠季監督。むろんガンダム(最初の)はすばらしかったが,僕にとってよりインパクトがあったのは次作の「伝説巨神イデオン」である。

かつて「禁断の惑星」に魅了された僕にはあの"イデ"のモチーフが非常に快感だった。明日のない主人公たちの運命ともの悲しいBGMが何とも言えず印象的な世界を生み出していたのだ。

そしてシリーズ終盤で壮絶な打ち切りとなったこの作品に監督なりの決着をつけた劇場版の登場。なかんずく遂に日の目を見た真のラストシーンを含む「発動編」のパワーはただごとではなく,果てしない闘争の果ての登場人物全員死亡という悲惨な結末はあまりに衝撃的だった。

いろんな意味で一線を越えた……越えてしまった作品なのだ。

そんな問題作のエピローグ,これはいまだに忘れられない。敵味方登場人物全員の魂がすべてのこだわりを捨て星々の間をうれしそうにかけめぐる。子供たちの魂は Happy Birthday to You と生まれ変わる旅への喜びを歌う。

LDではサイド4(発動編のサイド2)の44分20秒だ。全員オールヌードなので描き方が難しいと当時のメイキングで語られていたシーンでもある。この後,魂たちがメシア(ネーミングは救世主だが,導く者,先導する者という描き方だった)に導かれ光の矢となって宇宙を飛んでいくシーンが美しい。49分12秒あたりからのカンタータ・オルビス(名曲!)にのせてのこのシークェンスは荘厳でさえある。

死ねばすべてがよくなると受け取られかねない危険さが指摘されていたエピローグだが,アニメ史上に残る名場面のひとつであることは間違いない。全4面192分の巨大作。BGMも必携。

伝説巨神イデオン 接触編/発動編 TCLA-1001
発売元(株)タキ・コーポレーション