ひょっこりひょうたん島の大人と子供の唄

■ひょっこりひょうたん島■

昔,テレビの人形劇は人気があった。あちこちで量産されたわけではないけど,ひとつの作品が惜しまれて終了するとしばらくしてまた新たなシリーズが誕生する。そんな感じで途切れずに続いていた(主にNHKのおかげだけど)人形劇も最近は教育番組以外ではあまり見られなくなった。ちと残念。

「ひょっこりひょうたん島」は数ある国産人形劇の中でもひときわ人気があった。リアルタイムで見た世代にとってはまことに懐かしく,楽しい想い出になっている。僕も毎夕テレビにかじりついて見ていたクチだ。

さてこの作品,平成になってオリジナルのスタッフ・キャストが集合し,立派なリメイクが行われている。鮮やかなカラー版ひょうたん島との再会はファンにとって格別なプレゼントだった。好評につき何シリーズか作られたのでこのリメイク版をご覧になった方も多いだろう。オリジナル版当時の雰囲気を再現しつつも映像は格別に美しく,サンデー先生の金髪が明るく輝いていた。

その後リメイク版第1シリーズの「海賊の巻」はLDボックスになり,ひょうたん島を所有するという長年のファンの夢は数十年ぶりに実現したのである。ああシアワセ。

ところで,ひょうたん島はミュージカルでもあったのだが,その偉大さははからずもリメイクによって明瞭になった。実に未来的というか時代の先を突いたセリフや演出に満ちていたのである。それはこの番組の名曲の数々によっても明らかだ。

とにかく名曲の多い番組だったが,やはり1,2を争うメジャーな曲として「大人と子供の唄」を挙げたい。サンデー先生と子供たち(ついでにトラヒゲ)が歌うこの曲は大人の言い分と子供の言い分が交錯する,見方によっては相当に辛辣な曲である。

世俗的な成功や安定のために勉強しなさいと命令されるのはまっぴらだと訴える子供たち。対して勉強することの大切さを誠実に訴えようとするサンデー先生。で,互いが互いの言い分に納得しているかというと実はそうではなく,後々までことあるごとにこの曲はくりかえし登場する。数十年前と同じ歌詞でありながら全く古びていない。

今ならボックスとは別にリリースされている「海賊の巻」のソングコレクションLDのサイド1チャプター6で視聴できるぞ。中山千夏,楠トシエ,熊倉一雄といった芸達者揃いの,今思うと驚異的な豪華キャストの番組であった。

ただ一つ惜しまれるのはひょうたん島最高最大の人気キャラクター,ドン・ガバチョ大統領役の藤村有弘氏だけが故人で参加できなかったことか。氏の芸達者ぶりは空前絶後であり,まさにワン&オンリーのドン・ガバチョその人だったからである。

ついでといっては何だが,機会があれば実業之日本社から出ていた伊藤悟著「ひょっこりひょうたん島熱中ノート」という本もぜひ探してみよう。まさにファンの鑑のような人である。

Song Collection ひょっこりひょうたん島-海賊の巻- JSLD-1011
発売元 NHKエンタープライズ/ビジュアルヴック社