クララが歩いた

■アルプスの少女ハイジ■

タイトルだけでお分かりかと思うが「アルプスの少女ハイジ」である。むろん,テレビアニメのハイジだ。高畑勲や宮崎駿らそうそうたるスタッフが作りあげた傑作シリーズであることは万人が知っている。いやよかったよな〜あれは。

LDが元気でボックスものがばんばん出ていた時期に「ハイジ」の全話ボックスもリリースされたのだが,当然何をおいてもこれは買った。これを買わずして何を買うというのだ。ねえ。さすがに本放送時にビデオを回すほどの財力はなかったけど後にBSで全話オンエアが始まったときは「やたっっ!」と喜び勇んでテープを買いに走ったものだ。NHKで民放のアニメを再放送するなんて当時としては画期的な,かつ非常にうれしい事件だったのだ。

お話の方は誰もが知っているとおりだが,物語終盤はクララが歩けるようになる感動的なドラマを描いていた。これがもう一話一話実に泣ける展開で,「幸せって何?」という問いの答えはすべてここにあるじゃないか,そう言いたくなる幸福感に満ちていた。

さて「クララが立った」というシーンはいくつかある。たとえば近づいてきた牛に驚いて無意識に立ち上がってしまった48話とか,依存心からついまわりに甘えて本気で立とうとしないクララにハイジが怒りをぶつける(クララは思わず立ち上がってしまう)50話とかだ。

このあたり,クララの希望とあこがれ,焦りや心細さが実に細やかに描かれていて感心する。登場人物があやつり人形ではなく,みな繊細な魂を秘めていることが伝わってくるのである。そしてそれらがある意味頂点に達するのが最終回のひとつ前,51話であった。

ひと波瀾あってハイジたちの感情が大きなうねりを迎えた後,静かな山の草地でクララは自らの足で歩いて小さな花を摘む。

摘んだわ,生まれて初めて自分の足で歩いてお花を摘んだわ

祝福するハイジやペーター。うんうん,よかったねえ。何度見てもおじさんは泣けてしまうよ。おまけに音楽がまたいいんだ。ひかえめでありながらしっかり涙腺を刺激するんだもんなあ。ずるいや。

LDでは最終巻のサイド2チャプター2の22分ちょうどあたり。ここを見てしまうとそのまま最終話まで続けて見ずにはおれないという絶大な吸引力を持ったシーンである。こちらもクララのお父さんやおばあさまが喜ぶ顔を見て幸福感をかみしめたくなるんだよねえ。

ハイジ役の杉山さん,クララ役の吉田さん,それにペーター役の小原さんもご立派としか言いようのない名演で,あらためて声優さんの力を思い知る。最近はDVDにもなっているのでいっちょう奮発してみる勇気をあなたに望む。これは財産だよ〜。

アルプスの少女ハイジ-Memorial Box Part2- BELL-630
発売元(株)バンダイビジュアル