おばさんとゴジラ

■ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃■

かつての特撮大好き,怪獣大好き少年を引きずったまま今に至っている人たちの中には近年のゴジラシリーズに複雑な思いを抱いている方も少なくあるまい。

傑作として生まれながら,シリーズが進むにつれてレベルダウン著しく,ついには終息という作品は古今東西いくらもあるけど,同じ轍を何度でも踏むところがゴジラシリーズの特異な点である。好きなんだけどどうにも評価できかねる,というたいへんアンビバレントな思いに胸ふさがれるお兄ちゃんたちの憂悶は深い。

昨年(2001年)のGMKこと「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」でせっかく中興の祖(金子監督えらい!)が現れたと思ったら今年はまたメカゴジラだもんな。ああ,オレが東宝の社長だったらなあと妄想する君の気持ち,痛いほどよくわかるぞ。

大金持ちになって東宝を乗っ取り,現経営陣を叩き出して理想のゴジラを作るのだ〜という野心家が登場したなら僕も陰ながら応援させてもらおう。でも志の高い人間は豊かにはなれないというのが世の中ってもんだからなあ。思えば平成ガメラ三部作をあのクオリティで実現させた徳間社長はまっこと偉大だったと思う。

ま,それはともかく!

数々の制約に縛られながらGMKを送り出してくれた金子監督ほかスタッフ一同には拍手だ。あの大時代な設定に引いてしまった人もいるようだが,僕は全然気にならなかった。何しろまともに映画になってるゴジラは久しぶりだからね。外部の血を入れると現場が活性化するのがよくわかる。ここは"明日のために"しっかり作り手を激励しとかなきゃ。

さて,ゴジラといえば口から吐く熱線だ。あれはどうも万能兵器のようで,とにかくばんばん撃って力押しで相手を倒してしまうようなところがある。使いすぎは見てる側のインパクトを薄めるのだが,まあ,それは見せ方次第ということか。

その見せ方という点では最初の一発目が面白い。直接熱線を見せず,遠景でのキノコ雲という形で描かれているからだ。閃光と衝撃波,そして立ち上るキノコ雲。こういう凝った表現が増えてくれば見ている方もワクワク感が増してくる。

で,その問題の一発目の引き金になった(らしい)のが,ゴジラの足元で甲高い悲鳴を上げ続けていたおばさんだ。ゴジラの注意を引きつけるとは大したものだが,その報いが立ち上る原子雲というのは……合掌。DVDではチャプター14の41分11秒付近である。

あと半年の時間と予算に1億の上積みがあったら……とは誰しも思うところかもしれないが,今は言うまい。これまではそんな気にさせてくれることさえ稀だったのだから。

ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃 TDV2659D
発売元(株)東宝