不死身の群衆

■大怪獣ガメラ■

昭和ガメラの第1作「大怪獣ガメラ」は1965年の作だ。東京オリンピックの翌年,今思うとのどかな時代だったのだろうな。小学生のとき級友の姉にくっついて見に行ったそれはそれなりに興奮する映画であった。後々までけっこういろんなシーンを覚えていたのだが,そこはそれ子供の印象だから,大人の目で再会すると陳腐そのものの出来に幻滅する。まあ,これは仕方がない。ゴジラ第1作みたいな例は珍しいのだ。

さて,そのガメラ第1作。いかに陳腐化していようとも子供のころ愛した作品だからLDが出ればやはり買ってしまう。微笑みながら楽しむ余裕はなくしていないのだ。しかし1ヶ所「うひゃーこれは!」と目をむいたシーンがあった。予告編である。

なんということもない予告編。いやーやっぱ古いわなーなどと思いながら見ていると,東京で暴れるガメラのシーンが出てくる。ビルを破壊するガメラ。崩落するビルの中では大勢の人たちが逃げまどっている……逃げまどっているのだが,なんとこの逃げまどう群衆,不死身なのである。

崩れ落ちるビルの天井や壁の破片,おそらくひとかたまりが数十キロから数百キロ,下手すると1トンはあろうかという破片を頭や肩にガシガシと浴びながら「まるで発泡スチロールででもあるかのように」平然と無視して,でも悲鳴を上げながら避難していくのである。おいおい,こりゃーNGじゃないのかあ。

LDではサイド2の22分15秒あたり。いくら30年以上前といっても大人の目をそこまでなめてるわけはなかろうと思うのだが,これが劇場用予告編なのである。迫力あるように見えるけどスタッフは変だと思わなかったのかなあ。それともその程度の認識で事足りる時代だったのだろうか。

子供のころ見た本編は確かに面白かったが大人になって再会すると悲しいものがあった。しかし公開当時の大人の目にはどう見えていたんだろうな。この予告編で「おおお」と燃えた人がいたのだろうか。

そんなわけでこの予告編,なんとなく忘れられないのである。

大怪獣ガメラ DLZ-0173
発売元(株)大映/徳間ジャパンコミュニケーションズ