光る宇宙

■機動戦士ガンダム■

テレビアニメというジャンルがアニメファン以外の人々にどのくらい敬意を払われているか僕にはわからないけど,他のもっと"高尚"とされる文化よりよほど鮮烈な印象や影響を刻むことがある。通俗でも侮れないものはいくつもあるが,これもそのひとつだと思う。

今では一般名詞として通用する「機動戦士ガンダム」,僕はファーストガンダム世代なのでもうずいぶん昔の話になってしまうが,思い返すとオンエア当時の熱気が懐かしい。今までとはモノが違うぞ,という興奮と期待のミックスされた快感だったろうか。当時の日本SF大会でその第1話が上映されたことを覚えている。SF作品としてしっかり認知されていたわけだ。

ガンダムについてはもうすっかり語り尽くされているので個人的な思い出話しか書けないが,とにかく"入れ込んで"見ていた。僕の住んでいた地域ではオンエアされていなかったのだけど,わざわざアンテナにブースターをつけて隣県の電波を拾って見ていたくらいだ。

子供向けアニメのぬくぬくとした世界に,その外側の冷めた大人の視線を持ち込んだようなそんな感じが「ぼくらはもうガキじゃないんだ」という思いを抱かせて刺激的だったのかもしれない。

アムロのニュータイプとしての素養が明瞭に顕れ始める後半,ストーリーも大きく動いて目が離せない展開になるが,特に事実上のピークとも言える第41話「光る宇宙」は圧巻だった。最近のスカスカで粗雑なテレビアニメとは密度がケタ違い。正味20数分の中にここまで詰め込んであると見ている最中に雑念の入る余地は全くない。一心に見入っていたことを思い出す。

アムロとララァの戦いであれだけ盛り上げて,それてもうこの回は十分すぎるほどの内容だったのに,更にソーラレイの発射というインパクトを持ってくるこの展開。気合い入ってるねえ。感服。

ジオン軍のソーラシステムはスペースコロニーの直径分のビーム兵器だが,ただの反射鏡にしか見えなかった連邦軍のそれよりずっと兵器っぽく描かれている。発射プロセスを描いたシーンをここでは取り上げておこう。LD版ボックスのサイド10チャプター3の21分51秒あたりから。砲身(といっていいのか)の姿勢制御にふかすロケット,発電パネルに落ちる戦艦の影,といった小技が効いている。

いろんな要素がオーバーヒートしながらぐんぐんと上り詰め,ついに一線を越えるようにして生まれるもの……後々まで語り継がれる傑作や名場面というのはそんなふうにして誕生するのかもしれない。ガンダム終盤の展開を見ているとそれがよくわかる。

機動戦士ガンダム メモリアルボックス Part-2 DISC 5 BELL-1202
発売元(株)バンダイビジュアル