リアル・バイオレンス

■巨神ゴーグ■

テレビアニメをほとんど見なくなった。別に卒業したつもりはないのだが,こちらにもライフスタイルの変化というものがある。歳をとったということかもしれない。晩秋になって遠い夏の思い出を振り返る……というほど枯れた気分ではないが,主題歌コレクターであった日々はすっかり昔話になってしまった。

「巨神ゴーグ」は僕がまだテレビアニメをがんがん楽しんでいた時代のお気に入りの作品だ。LDのジャケットを見ると1984年の作品とある。むうーもうそんなに昔になるのか。

ガンダム以降一世を風靡した安彦良和の血が最も色濃く反映されたこの作品,今のテレビアニメではまず制作不可能な作画の充実ぶりが気持ちいい。どんどん作画レベルが薄味になっている昨今のテレビシリーズとはケタ違いのクオリティである。やはり絵が貧しいと見る気がしなくなるもんね。

加えて2クールできっちりと完結している物語,アメリカの連続活劇を彷彿とさせるスタイルなど,作品のカラーが実に明瞭で完成度の高い世界が生み出されていた。LDのリリースは今と較べると割高な買い物ではあったが,喜んで買いに走ったものである。

地図にない南洋の孤島で異星人の遺産である巨大ロボットをめぐって繰り広げられる冒険活劇,主人公はまっすぐな日本人の少年,とくればもちろん子供向けロボットアニメの意匠ではあるのだが,演出はやけに大人っぽいテイストになっていた。

その最たるものが第22話「報復の足音」での船長とレイディ・リンクスの絡みだろう。異星人の遺産が眠る島の秘密をめぐって様々な思惑や謀略が交錯し,敵味方入り乱れる中で,船長(CIAの雇われ工作員?)がシンジケートの女ボス,レイディを痛めつけるシーンだ。

暴力専門家の大男が若い女に暴力をふるう様を子供向けテレビアニメでこれほどストレートに描いたシーンというのはちょっと他にないのではなかろうか。完全に大人向け映画のノリである。殴る,蹴る,服を引き裂く,乳房はこぼれるという具合で,放映時にも「おお,過激だ〜」と驚いた記憶がある。

別に非難しているわけではない。暴力シーンを礼賛しているわけでもないが,よくまあこんな思い切ったことを,と印象深かったのである。今じゃテレビ局側がびびってとても無理なシーンだ。

LDではサイド3チャプター7の41分6秒あたりから先。ドラゴンボールなどでいくら超人同士がド派手にぶつかりあっても見ている側は楽しんでいる。隔離された深夜アニメやOVAで過激な暴力シーンが展開されても同様だ。しかし,夕方放映の一応子供向けの作品でこんなシーンが飛び出すとインパクトが違う。生々しすぎるというかね。

そんな過激な一幕も含めて,本筋である少年とゴーグの交流,波乱に満ちた冒険,感動的な大団円までとにかくきっちりまとまった物語世界を見せてくれるのがこの「巨神ゴーグ」だ。赤白青のロボット三原色はどうも,という方にぜひおすすめしたい。

巨神ゴーグ Vol.3 TCLA-90261
発売元(株)タキコーポレーション