ゴジラの骸骨

■ゴジラ■

我が国の怪獣映画史上最高傑作を挙げよと言われれば,これはやはり昭和29年の「ゴジラ」第1作であろう。もちろん平成ガメラシリーズもすばらしいが,歴史的意義という点も含めてこの日本の怪獣王の誕生作は揺るぎない地位を占めている。

ゴジラのキャラクターは昭和ゴジラ,平成ゴジラと続く長い歴史の中でいろいろと変遷を重ねてきたが,人間がゴジラに完勝したのはこの第1作だけと言っていいだろう。その主役がオキシジェン・デストロイヤーである。すごいネーミングだ。このセンスには感服するほかない。

異端の若き天才,芹沢博士(今はなき平田昭彦氏の押さえた演技が光る)が発明したこの超兵器は後のビーム兵器のたぐいとは一線を画する響きをもって我々怪獣大好き少年(のなれの果て)の心に深く刻み込まれているのだ。

子供のころはこういう固有名詞を覚えること自体が楽しかったものだ。

僕の持っている最初期版のLDではサイド2の46分07秒,すでに物語の幕切れ寸前,この世界にたったひとつの禁断の兵器により海底に没したゴジラは肉体が溶け,骨だけのしかばねと化し,やがてその巨大な骨格さえも消滅していく。後のバカバカしく強いゴジラを見慣れている人には衝撃的なシーンであろう。

そしておのれの発明が軍事技術に転用されることを防ぐため,自ら海底に没した芹沢博士もまた帰らぬ人となる。このあたりはもう正座して見るべし,という厳粛な展開である。号泣。時代の雰囲気もあろうが,この美意識はまさに日本人のものだ。

しかし,そこまでして守り通したこの国の今の姿を知ったら,芹沢博士も草葉の陰ではらはらと落涙されることだろうなあ。

ちなみに「うる星やつら/ビューティフルドリーマー」(これもすばらしい)の中でラムやあたるたちが映画を見ているシーンがあるがそのスクリーンに映っているのはこの「ゴジラ」のサイド2の39分04秒あたりのシーンである。ていねいに作画されているのですぐに「あ,あそこだ」とわかるだろう。

どのプレスのものであっても必携の1枚。かつて怪獣映画はこれほどまでに厳粛なドラマをはらんでいたのである。

ゴジラ TLL 2002
発売元(株)東宝/ビデオ事業部