福岡ドームから飛び立つガメラ

■ガメラ/大怪獣空中決戦■

平成ガメラシリーズの第1作「ガメラ 大怪獣空中決戦」は怪獣映画ファンの永年の渇きを癒してくれる画期的な作品だった。映画誌はじめあらゆる媒体がこぞって絶賛するものだから,ずいぶん期待して見に行ったことを憶えている。いや面白かったね〜。

日本の実写作品が低迷している間に世界レベルにまで突出したジャパニーズ・アニメーション。その方法論を実に上手く取り入れたセンスと演出の成果である……なんて分析は掃いて捨てるほど書かれているけど,我が国の特撮映像史上に残るすばらしい仕事であったことは間違いない。

マンネリの東宝Gシリーズには決して望み得ない「こういうものが見たかった」というシーンの数々が実現していることがなによりうれしかった。しかもその描き方はハイレベルなアニメやコミックの洗礼を受けた僕たちの嗜好にぴったりマッチしていた。

中でも最高にうれしかったのは,前半のクライマックスにあたる福岡ドーム攻防戦でのガメラの回転ジェットのシーンである。ドームから逃げたギャオスを追ってガメラが飛び立つシーンは何度見てもすばらしい。

回転ジェットはガメラの最大の特徴のひとつなのだが,昭和ガメラシリーズでは低予算とチープな特撮のせいでバカにされることも多かった。しかし今,現代CG技術の力を得たそれはセンス・オブ・ワンダーに満ちた傑作シーンに生まれ変わった。

この映画の中で1度だけしか登場しない回転ジェットだが,昭和ガメラのそれしか知らないこちらにとっては「カッコええー」の一言である。LDリリース後,何度繰り返し見たことか。

LDは何バージョンか出ているが,ボックス仕様の特別版ではサイド1チャプター27の37分30秒あたりから。このわずか30秒あまりのシーンは大谷幸氏の絶妙な音楽もまた最高潮に達する部分であり,ハイレベルな怪獣映画を夢想してきたファンたちにとってはまたとない贈り物であった。

回転ジェットは続編の「レギオン襲来」でもほんの数カットしか登場せず,そちらのシーンもまたすばらしい出来だった。これについてはまたいずれ取り上げることにしよう。

ガメラ 大怪獣空中決戦 特別版 DLZ-0194
発売元(株)大映/徳間ジャパンコミュニケーションズ