硬直して眠るヒーロー

■電撃フリント■

催眠術の実験/実演でこういう光景を見たことがおありだろうか?暗示を受けた被験者の体がうんと固くなり,ついには棒のようになって頭(首)と足先だけを支えにして椅子と椅子の間に丸木橋のようにわたしても平然としている……。

これはやってみるまでもなく(危ないからおやめなさいね)通常の状態の人間には無理な姿勢である。催眠状態という特異な条件下で人体が見せる不思議の一端だ。

催眠が解けた後の筋肉痛とか筋肉疲労はどうなっているのだろう?とかねがね疑問に思っていたが,実際のところ後でひどく疲れるんじゃなかろうか。あれで「いや〜なんだかスッキリしました」と言われたらいよいよもって不思議だ。覚醒状態であればむちゃくちゃ筋力を使う姿勢だもんなあ。

しかし世の中は広い。あの姿勢でリラックスできるヒーローがいるのである。

それが電撃フリントことデレク・フリント氏である。腕が立ち,頭脳明晰,女にもモテモテ。しかしそれも度が過ぎるとお笑いになってしまう。この電撃フリントのシリーズはその度が過ぎている故のアホらしさを徹底して楽しめる映画だ。

007のパロディではあろうが,ここまでくると完全に独自の世界であってテレビの洋画劇場で楽しむにはもってこいのお気楽さであった。いくら窮地に陥っても全然心配してやる必要のないヒーローなので安心この上なし。これをテレビで見ていたころというのはまだ子供だったので,登場する美女たちのお色気(今はこの言葉はなんか恥ずかしいな)というかエッチさにドキドキしていたものだ。

さて,そのフリント氏,武芸百般に加えてヨガのごとき東洋の秘技にも熟達しているようで,西洋文明型の敵秘密結社はずいぶん痛い目に遭っている。ま,今見ると笑うしかないんだが楽しいぞ。でもって彼が独特の瞑想をするときの姿というのが上で述べた「椅子の間で棒のように硬直」スタイルなのである。ううむ,器用なお方だ。

「電撃フリント/GO!GO作戦」と姉妹編の「電撃フリント/アタック作戦」の2作をカップリングしたLDボックスはまさに好企画。中ジャケットのデザインがまた最高で,DVDを待つまでもなく,買って損はない。

その「GO!GO作戦」のサイド1チャプター13の冒頭21分57秒あたりからフリント氏の神秘の精神統一が拝めるぞ。彼はこの姿勢のまま3時間も心臓を止めて任務前の精神統一に励むのであった。どひゃー。

僕は主役のジェームズ・コバーンに関してはこのフリントのイメージが強い。それを聞いたら本人は喜ぶだろうか,それとも嘆くだろうか。

電撃フリント/GO!GO作戦・電撃フリント/アタック作戦 PILF-2520
発売元(株)パイオニアLDC