はじまりはいつもまっくらなのよ

■ネバーエンディング・ストーリー■

原作と映画の関係というのはなかなか難しい。映画化された作品には原作ファンからなにかとクレームがついたりするが,これはもうメディアが違うのだから別物と割り切っておかないと見る側も辛い。そうでないと原作付き(原作を読んでいる,というべきか)の映画を楽しむことができなくなってしまう。

とは言っても,自分が傑作と思っている原作が映画化されるとなると出来映えが気になるものだ。

84年の作品「ネバーエンディング・ストーリー」は原作ファンにはちょっと複雑な気分の映画だった。あのエンデの深遠な名作をこんな映画にしちゃって〜という声は少なくなかったと記憶している。原作者も相当ご立腹であったらしいが,そのわりにはパート3まで作らせたりしている。うーん。

ま,これはファミリー向けSFXアドベンチャー映画と思って楽しむのが正解なのだろう。あまり言及されることはないが,画面的にはたいへん楽しい作りで,DVDでもぜひ出してほしいと思っている。僕の持っているLDはまだアナログ音声時代の代物なのでぜひ高画質・高音質時代のバージョンで見てみたい。そういえばテーマソングもずいぶんヒットしたね。

この作品,特撮が楽しい映画なので「ほっほお〜」という場面はいろいろあるのだが,僕が一番好きなのは実はすべての派手なシーンが終わった後だ。ファンタージェン崩壊後のシーンである。

何もない真っ暗な世界でファンタージェンの女王である幼ごころの君とバスチアン少年が静かに語るあのシーンだ。なんだかしんみりしてていい雰囲気ではないか。幼ごころの君を演じたタミ・ストロナッハはなかなかよく雰囲気が出ている。原作ファンも彼女のキャスティングだけは納得ではなかろうか。

はじまりはいつもまっくらなのよ

物語世界の女王にふさわしい,いろんなことを想像させるセリフである。映画自体はあんまり評価されていないかもしれないが,派手なSFXとは無縁のこの静かなシーンが僕には忘れがたい。うちの古いLDではサイド2チャプター3の46分02秒あたりか。

蛇足だが,バスチアン君よ,世界創世の秘密に立ち会った君の望みがいじめっ子への報復であるというのは情けないぞ。志が低い!おじさんはちょいと悲しいぞ。

というわけで,未読の方には原作ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」がおすすめ。深遠かつ重いお話だが,この映画のラストのその後,バスチアンのたどる苦難の旅が胸をうつ。映画と原作の関係を考えるのにもいいかもしれない。

ネバーエンディング・ストーリー SF078-0039
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア