リーガンの回る首

■エクソシスト■

「エクソシスト」はホラー映画の記念碑的作品だ。当時はホラー映画ではなくオカルト映画と呼んでいたが,そのオカルト映画なる呼称がどっと使われるようになったのもこの映画以降であったと記憶している。

そもそもエクソシストという言葉自体を定着させたのがこの作品だ。以後,テレビ,映画,小説,コミックなどあらゆるジャンルで既知の用語として使われるようになったし,悪魔祓い,あるいは悪魔祓い師と書いてエクソシストとルビをふるようになった。

ただ1作で大きな影響を与えたという意味でも画期的な作品だったわけだ。

僕たち日本人には西欧でのキリスト教文化の根深さというのはなかなか実感できない。だから公開当時のアメリカでの観客の衝撃というか反応は想像するしかないが,今あらためて見直すとなかなか生真面目な映画だと感じる。「こんなことやっていいのかな」とちょっと腰が引けながらも製作していったという雰囲気が漂っている。

今では貴重な特典映像てんこ盛りのDVDが出ているので,誰でも容易に,しかも安価に(ワーナーさんの太っ腹に感謝)この映画史に残る奇怪なタイトルが入手できる。テレビで何度も見たよ,と言わずにぜひもう1度オリジナルに対面してほしい。面白いぞ。

今どきの超わかりやすいエンタテインメントのお話(シナリオ)に慣れているとつながりがよくわかんない部分があるので心して見よう。

さて「エクソシスト」といえば,数々のショッキングなシーンが話題になったものだ。可愛らしい少女リーガンの奇怪な変貌やポルターガイスト,空中浮揚などいろいろあったが,やはりとどめはこれ,リーガンの首がぐるりと180度あるいは360度回転するシーンではないだろうか。後に数々のパロディを生んだシーンでもあるが,絶対に人間ではないということを思い知らせるに足るショッキングなアイデアだった。

DVDではまずチャプター29の76分16秒あたり。ここでは首は180度回転で背中側を向く。更にチャプター40の104分16秒では360度,つまりぐるりと1回転する。見せ場のひとつだから今ならCGなどを駆使してもっともっとリアルに見せようとするだろうが,25年以上前に初めてこれを見せられた一般の観客には相当なインパクトがあっただろうな。

なお,収録されているBBC製作のドキュメンタリーはいろいろ裏話が聞けて実に面白い。リーガンの母親役候補にオードリー・ヘプバーンの名も上がっていたそうな。実現してたらどんな映画になっていたんだろう。

エクソシスト DL-16176
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ