ルシファー招喚

■エコエコアザラク■

さて「エコエコアザラク」である。実は原作はろくに読んでいないのだが,映像化されるたびになんとなく食指が動いてしまう。こりゃー凄い,とのけぞるようなことはないのだが,ついのぞきたくなってしまうのである。

美少女,魔術,流血,ホラーといった企画の立てやすい要素があるせいか何度も映像化されている「エコエコアザラク」だが,ここで取り上げるのは最初の劇場版だ。個人的には佐伯日菜子の黒井ミサの方が似合っている気がするのだが,今日は吉野公佳版の話。

ミサは暗黒面に生きる連中からたいそう恐れられているという設定なのに本編ではほとんど役立たず,というツッコミもできるのだが,まあその是非は監督にぶつけよう。流血が好き,とコメントしているくらいだから佐藤嗣麻子監督としてはこういう展開でないと困るのかもしれない。

でもこの第1作は劇場版の中では最も映画らしい出来映えだと思う。低予算をうまくカバーした作りで特撮はクライマックスの一点豪華主義といった感じかな。エロもグロも,その他大勢のキャラに対する容赦のなさも,監督が喜んでいたぶっているようでよいねえ。

ミサが非力な分,菅野美穂のキレッぷりが印象的で,これはもう誰もが認めるところだろう。その後「富江」や「催眠」といった作品からオファーが来るようになったのはこの「エコエコ」のせいもあると思う。あの高笑いがミスマッチでよいのだ。

映像的にはヤマ場のルシファー招喚のくだりが好きだ。技術革新の激しい今でも,このある程度の作り物っぽさがかえっていけてるんじゃないかな。白塗りのルシファーさまの降臨はなかなかよいではないか。ねえ。

うちのLDではサイド2チャプター13の23分55秒あたりから。で,その後の菅野美穂の顔がああなってこうなってというのは見ている方も「おっ」という展開でこれはうまい。最初に見た晩は何度もリピートしてしまったくらいだ。自分の顔がああなるのを許しちゃう女優さんには「君に幸あれ」と思わず激励してしまうぞ。

ルシファー(ルシフェル)というのは魔界の王だから人間ごときが呼び出すのは不遜もいいところなのだが,それができると思ってしまうところが実は罠なのだ。この陥穽に足を取られる人間が跡を絶たないおかげで古今東西,この手の物語は永遠に生み出されていくわけである。

……というようなエラそうなごたくはともかく,未見の方にはとりあえずレンタルビデオでもどうぞ,と言っておこう。

LD巻末のメイキングは明らかに吉野公佳のプロモーションビデオを兼ねているのだが,現在の彼女とはだいぶ方向性が違う。今となってはプロダクション側の「この路線でいきたかったのになあ」という嘆きが聞こえてきそうである。

エコエコアザラク完全版 TCLA-1007
発売元(株)タキ・コーポレーション