電子ペーパー

■ジュブナイル■

最近公開された押井守監督の「アヴァロン」などを見るとつくづく外人の容姿はSF映画に向いてるなあと実感する。実感するんだけど,といって日本人の演技するSF映画が作られなくなるのも寂しい。たとえハードな味わいのものが難しいとしても,いろんな切り口で和製SF映画への挑戦は続けてほしいものだと思う。

昨年公開された「ジュブナイル」はその名のとおりジュニア向けSF映画の佳作で楽しく見ることができた。TVスポットであのちっこいロボット(テトラ)の造形を見てチェックから外しちゃった人は早速ビデオ屋に直行だ。

鈴木杏はじめ子供たちのキャラクターや演技がなかなかよくてね。夏休みの少年少女向け健全娯楽SF映画として気持ちのよい仕上がりだった。それに冒頭の草原のシーンが映像的にも雰囲気的にもとてもいいのですんなりとドラマに入っていける。あれは実に純度の高い,ステキなファーストシーンだったなあ。

けっこう時間をかけて作られているフィルムだと思うが,これを見ると,細部にまできちんとこだわる余力と眼があれば邦画でも楽しいエンタテインメントが作れることがわかる。DVDではメイキングやコメンタリーでそのこだわり具合も楽しむことができるぞ。

さて,この映画の舞台は2000年の夏に設定されているが,エピローグではその20年後の様子が描かれる。そのパートを見ていて思わずふふふと微笑んでしまったシーンがある。特に名場面というわけではないのだが,個人的にちょっとにんまりしてしまった部分があるので取り上げてみたくなった。

それが電子ペーパーの描写である。2020年,大人になった主人公が新聞を読んでいるのだが,それがいわゆる電子ペーパーなのである。つまり紙のように薄く柔らかい素材のディスプレイである。それがそんなに珍しいかって?いやこれは僕にとってはとても気持ちいいちょっと懐かしい未来のひとコマなのだ。

僕が子供のころに想像されていた未来の風景の中に必ずあったのがこの手の「電子新聞」だ。未来の新聞はこうなるってな感じで描かれていたビジョンそのままなので,ついうれしくなってしまった。

現実にもE Inkという技術が数年後の実用化を目指して開発中であり,実は「ジュブナイル」のメイキング本でもこのE Ink社のサイトが紹介されたりしている。E InkすなわちElectronic Inkというわけだ。のぞいてみるとその原理をアニメーションで見ることができるぞ(これを書いている2001年2月現在)。

DVDではチャプター32の88分47秒というところ。主人公がペーパーの端のボタンを指でクリックすると表示が切り替わるのだが,パッと切り替わるのではなく,一瞬の間をおいてふわっと切り替わる感じがいい。この一拍を要する応答速度がいかにも電子インクが配置を変えているという感じがしてリアルである。

20年たっても世の中は雑然としてちっとも進歩した感じがしないかもしれないが,こういった身の回りのモノたちはさりげなく進化して未来世界を映しているのだろうな。僕の感触では20年といわず10年で実用化されると思うがさてどうかな。

ジュブナイル ZMBJ-1165
発売元(株)小学館/メディアファクトリー