大きさ1億倍のミミズ

■砂の惑星■

SF作家フランク・ハーバートの「デューン 砂の惑星」はまさに不朽の名著と呼ぶにふさわしい大傑作であり,僕にとってはオールタイムベストの作品である。デューンの前にデューンはなく,デューンの後にデューンはない。これほど面白い小説には滅多にお目にかかれないことだけは確かだ。

この作品,無謀にも映画化が試みられたことがある。公開時のタイトルは「砂の惑星」。監督はあのデビッド・リンチ。確かに彼らしくフリークと俗悪三昧の奇怪な大作になっていたが,それでも原作の洗礼を受けていた者にはあまりにも残念な出来だった。しょせんムリなのだ。そのスケール,波瀾万丈の冒険,複雑なプロット,精緻な世界観。それは各人の夢想の中でのみ映画化可能な作品だったのである。

さて,公開当時一応がんばっているといわれたSFXスタッフだが,苦心しただろうなと思われるのがこの作品の影の主役である砂虫サンドウォームの映像化である。

舞台となる惑星アラキスの砂漠に住む砂虫は,体調数百メートル,ときに数キロにも及ぶ超巨大ミミズみたいな生き物である。サイド3の21分44秒あたりに登場するやつがもっとも巨大感と迫力がある。広大な砂の海から巨大山脈のごとく出現するシーンはなかなかもので,ここだけは原作ファンの僕にもうなずくことができた。この映画のハイライトシーンかもしれない。

公開当時テレビの洋画情報番組などでみるそれは相当な出来であり,映画の封切りにもちょっぴり期待させてくれる代物だった。残念ながら映画本編の方は原作には遠く及ばないが,このシーンだけはそのスケールを買おう。

なお,原作は今でも入手できるが,可能であれば古本屋を回って初期の版を探そう。石森章太郎がイラストを担当しているバージョンである。デューンのイラストは石森氏のものがベストであり,世界最高のエコロジー冒険SFの無類の面白さにぴったりのイメージを添えてくれる。「デューン 砂の惑星」全4巻ハヤカワSF文庫だ。ああ映画ネタだったのに本の話になってしまった。

そうそう,映画版のキャストでは物語の語り手であるイルーラン姫がもっとも石森氏のイラストのイメージに近かったことを付け加えておこう。

僕の知る限りこれは予約だけで完売した最初のLDである。

砂の惑星 K64L-5019-20
発売元(株)東北新社/キングレコード