日本人がヌンチャクと遭遇した日

■燃えよドラゴン■

ヌンチャクが日本のスクリーンに初めて登場したのはいつか。いったいどれが第1号の作品なのかはわからない。しかし,その存在を一挙に日本の全国民に知らしめたのは言うまでもない,誰に聞いても同じ答えが返ってくるはずだ。

これはやはりブルース・リーの作品とりわけ「燃えよドラゴン」の登場をもって嚆矢とすべきであろう。「燃えよドラゴン」はそのくらい画期的だった。たった1作でひとつのカテゴリーを映画界に誕生させたパワーは「スターウォーズ」にも匹敵する。偉大なるかなブルース・リー。

この作品,冷静に見ればちゃちいところだっていろいろある。しかしなんといってもインパクトがすごかった。日本中の男を空手(ホントはカンフーだが)や格闘技かぶれにしてしまった絶大な影響力は他の類似作を寄せ付けない。早い話が空前絶後,ワン&オンリーなのである。

おかげで当時あちこちにヌンチャクを振り回すお兄さんがいた。実際やってみると相当に難しいことを痣とともに思い知ることになるのだが,アクション映画特にうんざりするほど作られた空手アクションでは欠かせぬアイテムになっていたものだ。

しかし今あらためて本家本元たる「燃えよドラゴン」を見てみると,実は意外とヌンチャクの出番は少ないのである。ほとんど活躍していないと言ってもいい。サイド2の31分25秒あたりでブルース・リーはその妙技を披露してくれるのだが,時間にしてわずか10秒あまり。それだけである。その直後に閉じたシャッターに囲まれて捕らえられてしまうのである。みなさんよくご承知のとおりだ。

今思うとあの程度の出番でなぜ日本中にヌンチャクの印象が刷り込まれてしまったのかよくわからないが,正面を向いてヌンチャクを構えたおなじみの映画ポスターの影響かもしれない。今となってはこれもまた伝説であろう。

燃えよドラゴン NJEL-01006
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ