サント・メールの教会にて

■史上最大の作戦■

クラシックな名作というのはテレビの洋画劇場でもさんざん放映されるので,特に映画ファンでなくとも目にする機会は多い。しかしそれで何となく「見たような」気になっていると,DVDなどで本格的に対面したときに「へえー」と思うことがよくある。こういう映画だったのか!という新鮮な驚きだ。

これをクラシックと言ってよいのかどうかわからないが,僕にとって「史上最大の作戦」もそうした作品のひとつだ。

ご存知ノルマンディー上陸作戦を描いた戦争映画の超大作である。連合軍にとっての最も長い一日(THE LONGEST DAY)が同時進行するいくつものエピソードで描かれるわけだが,通して見ると意外なほど淡々と進んでいく。展開する大状況そのものが主役という感じで,オールスターキャストの印象が目立たないせいかもしれない。

とにかく物量もすごいが,それを生かす撮影がすばらしくて時々「むうー」とうなってしまう。特に空撮は見事で,本当に戦場のまっただ中を飛んでいるような視点で見せてくれる。モノクロ画面のおかげで戦時ドキュメンタリー映像みたいなリアリティを感じさせるシーンも少なくない。

飛び交う暗号,レジスタンスの戦い,将校たちの決断,同時進行する作戦,物量対物量,ばたばたと死んでいく兵士等々……それぞれのエピソードはそれだけで1本の映画になりそうなものばかりだが,あまり感情移入の対象になるキャラクターがいないので意外なほど冷静に見てしまう。

しかしそんな中で際立って印象的だったのは,ドイツ軍が占領するサント・メールの街へ降りてしまった落下傘部隊のくだりだ。降下位置がずれて敵のただ中へ降りてしまう兵士たち。教会の塔にパラシュートが引っかかって宙吊りになってしまった兵士は,撃ちまくられ死んでいく仲間たちをなすすべもなく見送らねばならない羽目になる。その残酷な特等席の耳元では教会の鐘が鳴り続けているというシーンだ。

戦場での人命のなんというはかなさ。あの時点ではこうした消耗覚悟の力押しで攻めるしかない状況だったのかもしれないが,この映画を見ているとけっこう無謀な作戦やってるなあと感じてしまう。ここはその象徴的なシーンではなかろうか。

DVDではチャプター5の80分42秒あたりから先。ここも空撮がすばらしいのだが,それは数瞬後に散っていく兵士たちの視点でもあるのだ。映像がすばらしければすばらしいほど戦争は映画の中だけに閉じこめておきたいものである。

この映画はオールスターキャストでラストのクレジットを見ていると「おお,あの名前も,あっ,この名前も!」という豪華な顔ぶれである。でも先にも書いたようにそれがあんまり目立たない。彼らはこの大規模に再現された疑似戦争に徴兵された兵士あるいは士官として参戦していたのかもしれない。

ちなみに口笛と男声コーラスのあの有名なテーマ曲はラストシーンからエンドクレジットにかけて流れる。言わずと知れた名曲中の名曲。

史上最大の作戦 FXBA-1021
発売元(株)20世紀FOXホームエンタテインメントジャパン