人間賽の目切り

■CUBE■

賽の目(さいのめ)に切るというのはサイコロのような小立方体状に切り分けることを言う。ま,お豆腐を切るときのことを思い出していただきたい。しかしその対象が人体ということになるとグロテスクの極みであり,悪夢そのものだ。

ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の問題作「CUBE」はこの衝撃的なシーンで幕を開ける。ショッカーというかホラーというか,とにかくあっと驚く独創的な作品であることは間違いない。小説ならともかく,映画でこれをやってしまう力にはただただ敬服する。

「すごいよ,あんた」と素直に賛辞を捧げる気になってしまうのだ。

なにしろこの類例のない状況設定では何をどこまで書くとネタバレになってしまうのかよくわからないのだが,○○○が×××というのは△△△でたまげたよなーなどと伏せ字ばかりになっても仕方がない。ホントは上記のシーンだって知らない方がいいのだが,そうするともう何も書けなくなってしまうので,これから見る人にはごめんなさい,乞うご容赦である。

しかし,それにしてもよくこんなの作ったよなあと感心する。映画製作の環境も違うだろうけど,邦画では100年たっても実現しそうにないタイプの作品だ。もしこんな企画が出されたら今の邦画各社の経営陣は卒倒しかねないぞ。

実際にはセットの使い回しがきく映像(ああ,なんてもどかしい書き方!)なので,制作費もそんなにビッグバジェットというわけではないだろう。それはわかるが,アイデアと見せ方,スリリングな展開のおかげでこの悪夢のような迷宮世界の印象は強烈だ。しかもこの迷宮は美しい。それがまた恐ろしいのである。見終わったときにはふうーっとため息が出る。

問題の人間賽の目切りはDVD冒頭,チャプター2の2分50秒あたり。つかみはバッチリの好例だ。本編はスプラッタホラーというわけではないのでその手の話が苦手な方でもいけると思うのだがどうだろう?

厳密に言えば小立方体状ではなく小直方体状に切れているようだが,これはあの仕掛けの構造からして納得。え,何のことかわかんないって?これはもう自分の目で確かめていただく他はない。

人体が切れる話を嬉々としてああだこうだと書くのもなんかアブナイのでこのへんで。未見の方はとりあえずビデオ屋に走ろうね。

CUBE PCBP-00094
発売元(株)ポニー・キャニオン