地獄の風景

■コンスタンティン■

今のように映像技術が進歩する以前から映画で地獄や天国を描いた作品はいくつもあった。シリアスなもの,コミカルなもの,そして時には芸術的なもの,と取組み方はいろいろだが,死後の世界というのは洋の東西を問わず映像にしてみたい素材のひとつなんだろうな。現に絵画では無数に描かれてきたからね。

昔,邦画で「地獄」というそのものずばりの映画があって原田美枝子と地獄図絵の数々だけがぼんやりと記憶に残っている。ちゃんとパンフレット買ってるところを見ると自分が劇場に通い詰めるようにして映画を見ていた時期を思い出す。

で,つい最近見たのがご存知キアヌ・リーブスの「コンスタンティン」という作品。神と悪魔の代理戦争をやらされる人間たちのお話。これは面白かったな。まあ我々異教徒の存在を全然考えていない世界観ではあるけど,今の日本人にはキリスト教的黙示録の世界はけっこうおなじみのものだからすんなり楽しめた。

しかし本当に今どきの映像技術ってとんでもない絵をごく普通に作り出せるんだね。当たり前のようにすごい映像を使えるのは作り手にとっていいことなのかやっかいなことなのかちょっと考えてしまう。

それはそれとして,ここに登場する地獄界の風景というのはなかなかの出来じゃないかな。それこそごく普通に地獄地獄しているというかね。炎と風が吹き荒れ,亡者たちが跋扈するイメージは最大公約数的なものかもしれないけど,僕には納得できる「絵」だった。

特に気に入ったのは地獄の亡者というか日本でなら「餓鬼」と呼ばれる生き物の描写。頭部が上半分削られてるような亡者がわらわらと寄ってくるシーンなんかにやにやしてしまったよ。DVDではチャプター13の43分45秒あたりから先。あの風景をスクリーンセーバーにできたらさぞ悪趣味でよかろうな,などと考えてしまったよ。

設定も展開も日本人ならマンガみたいと言うだろうけど実際原作はあちらのコミックだ。主人公はかなり利己的な地獄のエージェントって感じで行動の動機も自己都合がメイン。それでもこのキャラはなかなか立っていてキアヌ・リーブスのキャスティングは大成功だと思うな。できればシリーズ化も歓迎したいところ。

主人公は末期肺ガンで肺はタールでドロドロ,死期は目前という設定なんだけど,それを○○○したのが「あのお方」というのが皮肉でよかった。あと,この映画での「羽」の描き方も気に入った。

コンスタンティン DL-38942
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ