電話ボックスでいじめないで

■シャレード■

これを書いているのは2006年6月末だけど、少し前に名作「ローマの休日」のDVDの著作権、いや販売権なのかな?で揉めてるというニュースがあった。新聞に「ローマの休日」は誰のもの、なんて見出しが出ていたように思う。それだけオードリー・ヘプバーンの人気は不滅ということだね。特にこの国ではそう。

彼女の中期の代表作「シャレード」も大変人気のある作品で、あの有名なテーマ曲とオープニングの渦巻きアニメのクレジットを見ているだけで僕なんか映画の世界に入り込んでしまう。すでにクラシックと呼ばれるカテゴリーに属する作品だけど、元々クラシックという言葉には「普遍的で優れた」という意味がある。いつの時代でも高い評価を受ける、音楽で言えばスタンダード・ナンバーみたいな映画と言ってもいいだろう。

実際、オードリーの魅力は文句なしだし、おじさまとの大人の恋模様とサスペンスも見事、すべてが気持ちよい完成度できっちりと2時間楽しませてくれるのだから観客にとっても作り手にとっても、あるいは興行側にとっても幸せなプログラムだと思う。こういうタイプの映画が最近はなかなか見当たらないんだよね。一部のターゲットは喜ぶけどあとの人たちは見向きもしてくれないという話が少なくない。

まあ、そんな事情は置いといてもこの当時の映画って本当に大人の仕事という雰囲気に満ちていると思う。僕みたいに歳くってしまうと尚更ね、こうした余裕ある作品というのに快感を感じるわけだ。

実際、今この場でちょっと昔の記憶を探ってみるだけでこの映画にちりばめられたシーンの数々が浮かんでくる。オープニングもそうだし、あのパーティーの場面で男女がボール(あ、リンゴだったっけ?)を挟んでむにむにする場面とかエッチな大人の遊びだよなー。さっき見直したら記憶にあるよりずっと大胆で驚いたよ。舞台装置を使ったクライマックスの息詰まる展開とかも……いやーいくらでも出てくるじゃないか。

この映画が名場面の宝庫だってことに今さらながら気がついた。

でも僕が一番印象的だったのはここ。登場する悪役の一人ジェームズ・コバーンが電話ボックスの中でオードリーのヒロインを脅迫するくだりだ。怯えるヒロインのスカートに火のついたマッチを落としながら脅迫するシーンである。なぜか「シャレード」というとこのシーンが真っ先に浮かぶ。

きれいな女(の子)をいじめるってのは男どもの永遠の悪癖だ。最初に観たのは子供のころのテレビの洋画劇場だったから自分の中にもそういう部分がガキのころからあったんだろうねえ。で、反応しちゃったと。

DVDではチャプター6、時間にして30分17秒あたりから。今確かめたらうちのDVDは廉価版の4対3仕様じゃないか。これはいけない、さっさとスクイーズ版を買ってこなくちゃ。

シャレード UJCD-34786
発売元(株)ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン