物体XのうげげSFXを見る

■遊星からの物体X■

「スターウォーズ」でブレイクしたSFX技術は驚くべき映像の数々をもたらしたが,スタイルとしてはいくつかの系統に向かってそれぞれ進化し続けている。

たとえば「スターウォーズ」に代表されるメカニック系。かつてのSF少年が大喜びするタイプだろうか。僕らが夢想したスペースオペラを現実の映像として実現したのがこのタイプ。また「ターミネーター2」や「ジュラシック・パーク」などの驚異のCG系。これもすごい。ほとんど実現できない絵はないのでは?というくらいとんでもない画面を見せてくれる。

そして「エイリアン」以後新時代に突入したぐちょぐちょぬるぬるぎとぎとのクリーチャー系。これがまたこれでもかというくらいリアルな気持ち悪さで覇を競っている。このタイプは大量流血のスプラッタ系とはまた違った生理的な気持ち悪さがウリ?だね。血は平気だけどぬとぬとした内臓感覚がイヤだという人は少なくない。

ジョン・カーペンター監督の82年の作品「遊星からの物体X」はこのクリーチャー系の気持ち悪さという点で画期的な映画だった。まだCG技術が未発達な時代なので物理的な造形物による撮影だが,その異生物の気色悪さといったらないぞ。最初見たときは文字どおり生理的嫌悪感というやつで口元が歪んだ気がしたものだ。うひー。

LDではサイド2チャプター1の20分35秒あたりからの数分間。げろげろでほとんどナンセンスの域に近いほどだが,ちぎれた首から細い足が何本もにゅっと生えてくるあたりはハイライトだ。しっかり眼底に焼き付けておこう。

その後SFXはとんでもない進歩をしてグロテスクな表現もエスカレートする一方だが,この作品がその源流のひとつであることは間違いない。むろん,映画自体もスリリングで目が離せない出色の出来だ。

二人の男が向かい合っているラストシーンには重大な仕掛けがあるが,それに気がつかないと怖さの度合いが違ってくる。より楽しむには集中力も必要だ。

遊星からの物体X SF078-0061
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア