バトルロワイアルの正しい戦い方

■バトル・ロワイアル■

映画会社にもそれぞれの作風というかカラーの違いがあるが,東映なればこその企画,言いかえると東宝ではまず実現しなかっただろうなと思ったのが「バトル・ロワイアル」だ。原作はひとまず脇へ置いとくとしても,この内容で映画化に手を挙げるとしたらやはり東映だろう。

公開時の国会議員やマスコミを巻き込んでの騒動は面白かった。こういうケースはもっとたくさん出てきてほしいものである。おかげで普段エラそうなことを言ってる誰それの程度がわかってしまった。人は何を支持するかではなく何を否定するかでその正体が知れるというわけだ。

深作監督というと邦画ファンには評価が高いけど,僕には「宇宙からのメッセージ」という脱力体験があるだけにおいそれとは信用できない。しかし,この作品は幕切れがフシギに気持ちよくて見る前の予想よりずっと気に入ってしまった。あのラストを甘いという人も少なくないと思うが,一般公開する映画としてはあれでいいのではないだろうか。

小さな手にナイフを握った典子の細いシルエット,あのけなげな覚悟のようなものが深作監督の世代のロマンティシズムなのだろうか。前田亜季はお姉さんともども確実にキャリアを積んでいるようで,ぜひともこのまま映画界で伸びていってほしいものだ。

基本的には暗くて痛くて救いのないお話なのだが,嫌〜な感じのベストシーンとして例のビデオのお姉さんのくだりを挙げたいと思う。

孤島に隔離された生徒たちを前に,「バトルロワイアルの正しい戦い方」と題するビデオでこの殺人ゲームのルールが説明される場面である。この気持ち悪いくらいチープなビデオの部分が実に悪趣味で不快にできているのが印象的だ。プライベートな席だけで許される不謹慎で冒涜的なジョークがおおっぴらになってしまった気まずさみたいなものである。

DVDではチャプター5の11分47秒あたりから。本編中では間に他のカットが入ったりするが,サプルメント映像として「完全版」も収録されているのでじっくり見分しよう。でも教師キタノのリアクション入りの本編の方がより悪趣味でよいぞ。ビートたけしという御仁,あらためてすんごいキャラクターだなあと感服する。

ところで,この映画を見た直後にたまたま昔の劇場版スケバン刑事(南野陽子のやつ)を再見したのだが,技術的に全然変わってないので少し驚いた。この10数年の映像技術の進歩は相当なもんだし,絵作りのトレンドみたいなものもずいぶん変わったと思うのだが,それらがほとんど反映されていないように見える。

別にそれを突っつきたいわけではないが,深作組ってやはり古い映画屋さんなのかなと思わないでもない。最近の映画では徹底して加工された画像を見せられることが多いのでそんな風に感じたのかもしれない。

DVD冒頭のライセンス等の警告表示の文字も真っ赤でふふふと思ったけど,サプルメント部分もいろいろ見られてまずは損のない1枚だ。

バトル・ロワイアル DSTD02017
発売元(株)東映