和製ターザンの懊悩

■ブルーバ■

和製ナントカというのはジャンルに限らずよくある表現だが,これは映画においても同じ。和製スターウォーズだの和製カンフー映画など,出来はともかく誰でもひとつやふたつは思いつくと思う。

そこで和製ターザンである。1955年製作の大映作品。ターザンといえば最近でこそ作られなくなったけど,本家アメリカでは何度も作られた人気作。ワイズミューラーをあげるまでもなく,歴代のジャングルの王者は人気者だった。

タイトルは「ブルーバ」といってこれはヒーローの名前にもなっている。彼ブルーバはアフリカで行方不明となった学者夫妻(もちろん日本人だ)の遺児で,ジャングルの動物たちに育てられたという設定だったと思う。

アフリカのサバンナやジャングルが舞台の活劇を邦画でやろうというのも相当ムチャな話だと思うが,意外にもけっこう新鮮に見える。

演じているのは有名な水泳選手だったそうだが,このへんもワイズミューラーと同じだ。素人役者だからジャングル育ちのたどたどしい言葉も不自然ではないという都合のよさだが,さすがに身のこなしは運動神経を感じさせてくれる。もう少しウエイトが欲しいところだが,これは当時の日本人の体格では仕方のないところか。

で,ターザン映画であるからジェーンというかジェーン役に相当する女性も登場するのだが,当然これも日本人。しかし探検ルックに身を包んだ清楚なヤマトナデシコというのはけっこうアフリカの風景に映える。ちょっと感心したなあ。実際の撮影はアメリカだったそうだけど。

でもってお約束の水浴シーンとかがあるのだが,何しろ戦後10年しか経っていない時代である。色っぽいシーンというほどではない。しかしおくてのブルーバ君には彼女の開放的な姿は相当にまぶしく見えたようで,なんとなく彼の気恥ずかしさが画面から伝わってきそうな雰囲気がある。微笑ましいぞ〜。

LDではサイド2チャプター22の2分ちょうどあたりから。日本にもこんな映画があったんだねえ。クライマックスの動物たち大暴れのシーンが少ししょぼいけど,珍しさだけでもコレクションに加える価値は十分だ。

ブルーバ PILD-7087
発売元(株)大映/パイオニアLDC