ビビディ・バビディ・ブー

■シンデレラ■

魔法の呪文の歌である。メロディーはあまりにも有名なので聴いたことのある人も多いだろう。しかし今ではこの曲が独立してスタンダードになっているので,映画の中の挿入曲であったことを知る人はいても,さてそれが何という映画だったか答えられる人は意外と少ないかもしれない。

これはかの有名なディズニーの長編アニメーション「シンデレラ」の中の1曲である。意地悪な継母たちのせいでお城の舞踏会に行けないシンデレラ。彼女の前に現れた魔法使いの妖精(おばさんだが)がカボチャの馬車だのガラスの靴だのおなじみの魔法を見せてくれるシーンで使われている。

ここは地味な衣装で通してきたシンデレラ(何しろいじめられる役だからね)が華麗な変身を遂げるところであるから作画にも力が入っているが,前述の魔法使いのおばちゃんが歌うこの陽気でハッピーな曲(Bibbidi-Bobbidi-Boo)がいっそう効果をあげている。観客を楽しくさせてくれるディズニータッチここにありという演出だ。サイド2のチャプター10。CAV版なのでフレームナンバー31750というところか。

さすがに全盛期のディズニーだけあって作画の細やかさやキャラクターの芝居っぷりは見事なもので,豪華なドレスは現実のそれよりもはるかに軽やかに舞うし,ガラスの靴のきらめきはアニメーションならではの美しさだ。これを家族そろって劇場のスクリーンで楽しむというのはアメリカ人の幸せな暮らしぶりの象徴なんだろうな。

キャラクターデザインとしては「眠れる森の美女」のオーロラ姫のシャープな美貌も捨てがたいが,シンデレラは今見ると意外と気丈で強さを内に秘めている。かなり現代的な女の子かもしれない。ラストでちゃんとガラスの靴の片方を取り出すしたたかさが気持ちいい。いじめられるだけじゃないんだよってね。

悪役は徹底して憎たらしく,王子さまはいかにもええとこのボンボンで,王様はただのだだっ子だが憎めないおっちゃんだ。意地悪な猫の名前がルシファーというのはなかなか意味深なネーミングかもしれないぞ。

魔法が解けてもガラスの靴が残ったのはそれこそ魔法だったのかな。

ディズニー作品はたくさん出ているようでいてカタログから消えているものも多い。中古で見かけたら手に入れておこう。

シンデレラ特別版 PILA-1125
発売元(株)パイオニアLDC