ニューメディアはエッチとともに

■フィルム・ビフォー・フィルム■

かつての家庭用ビデオやパソコンのCD−ROM,あるいはインターネットの普及にいたるまで,とにかく新しいメディアが登場すると必ず盛んになるのがエッチなソフトの参入である。というよりこの分野なくしてニューメディアの普及はありえないというのが事実だ。まあちと情けない気もするけど,この方面に対する人類の情熱というのは半端じゃないのである。

エッチな写真を見たい一心でパソコンやインターネットの扱い方を覚えたという不届き者(自分の気持ちに素直な人とも言う……言ってあげよう)は僕の周囲にも少なからずいる。一太郎やエクセルでパソコン研修をやるよりはるかに効果的な学習方法かもしれない。性欲に基づくエネルギーというのはバカにできないのである。

さて20世紀文明の所産である映画。この偉大な発明にもエッチなプログラムは無数に存在するが,実は映画誕生以前のいろいろな映像の試みの中でもエロティックな素材というのは人気があった。当然といえば当然か。エッチは人類の歴史とともにあるのだね〜。

ドキュメンタリー「フィルム・ビフォー・フィルム」はそうした映画誕生以前の様々なからくり映像の集大成である。これは映像の歴史に関する実にすばらしいコレクションであり,映画に限らず絵画,からくり,写真,美術,風俗,文化といったことに興味のある者なら必携の逸品だ。

フィルム誕生以前の影絵,のぞきからくり,幻燈,立体玩具など,およそありとあらゆる映像アイテムのオンパレードなのだが,その卓抜なアイデアの数々には本当に感心する。しかも,それらの中にはエッチな小道具として工夫が凝らされているものが少なからずあって妙におかしい。珍品続出。男性優位の時代の産物ばかりだからスケベな殿方の嗜好品としてもてはやされたのだろうな。男ってしようがないね。当時のご婦人方のあきれる顔が見えてきそうである。

たとえばサイド1のチャプター30に登場する下着美女の写真の切り抜き。これは水につけると下着の部分が消えてヌードになっちゃうというものだ。なんか温泉旅館のお土産レベルである。また同じくサイド1のチャプター36に登場するのは中国製の杯であるが,これにはちょっと感動した。酒を注ぐと底に仕掛けられたヌードの美女が水面(酒の)に映像を結ぶのである。杯が空の時には見えない。面白〜い。ひとつ欲しいと思ってしまった。

こういうしょーもないからくりの数々の中に,後の映画の誕生につながる原理が隠れているのである。スケベは文明の原動力……なのかなあ。

フィルム・ビフォー・フィルム PILF-1668
発売元(株)パイオニアLDC