黄金バットの高笑い

■黄金バット■

ひょっとすると今の若い人は黄金バットを知らないかもしれない。何しろ戦前の紙芝居時代に生まれたヒーローである。戦後の絵物語や近いところでは(それでも60年代)テレビアニメにもなっていた伝説的作品だ。伝説的だからすごいのかというと実はそうでもないのだが,ま,当時の制作環境を考えればいたしかたあるまい。

しかし掛け値なしにこれだけはすごいと言えるのはそのキャラクターである。なにしろ黄金のドクロ怪人なのだ。これが数々の超能力をふるって悪を倒すのだが,ルックスは完全にショッカーの怪人でそのひびの入った頭蓋骨むき出しの大男(1万年の眠りからよみがえったミイラなのだ)がマントをひるがえし「ワハハハハハハ」と高らかに笑いながら戦うのだ。

しかも撃たれようが斬りつけられようが,あるいはビームを浴びようが「ううっ」だの「ぐわっ」だのと苦しそうな仕草をすることもなく「ワハハハハハハハハハ」と笑いながら戦い続けるのである。敵である悪人たちにとってはまさに悪夢のような恐ろしい体験だろう。

その「黄金バット」,かつて東映で実写映画化されたことがある。僕は恥ずかしながら子供のころ劇場にて観劇した(感激,ではない)。今となれば予告編だけで笑い死にしそうな作品だが,無垢な少年であった僕は胸躍らせて見ていたのである。

これが今LDで入手できる。東映系では後の「宇宙からのメッセージ」をしのぐ怪作であるからして,新品を買えとは言わないが中古で見つけたらサイフと相談するだけの値打ちはある。

しかしこの作品に関してはディスクの何分何秒あたりで黄金バットの高笑いが聞けると記すのは無意味である。なぜならこの怪人は登場しているときは常に笑い続けているからである。しかししゃべれないわけではなくちゃんと人語を解する。「我は黄金バット,我は正義のために戦う」といたって格調高くお話しになるのである。

うう,いかんいかん,確認のためにちょっと見ていたらついついはまりこんでしまった。千葉真一が正義の科学者であったり青島幸男がおまわりさんであったりという実にレアなキャスティングもよろしい。敵のボスの名がナゾーでその手下がピラニアだのケロイドだのジャッカルだのというのもすごいが,黄金バットのキャラクターがあまりにぶっ飛んでいるので彼らとて影が薄い。当時の美少女スター高見エミリーは今見てもかわいいぞ。

ちなみにテーマソングは後のテレビアニメ版と同じ。名曲である。このLDにはその全バージョンとカラオケ,予告編まで収録されている。至れり尽くせりとはこのことだ。

黄金バット LSTD01051
発売元 (株)東映/東映ビデオ