子供向けテレビアニメ初の濃厚キスシーン

■バンダーブック-100万年地球の旅-■

今でこそ18禁アニメなどという妙な分野があるが,かつてはアニメーション,それもテレビアニメとなればお子さまを対象にした作品ばかりだったからラブシーンなんてものはまずなかった。ベルばらみたいな突然変異もあるにはあったが,普通はヒーローとヒロインの軽いキスくらいが関の山だった。

が,ブレイクスルーは意外な形でやってきた。

例の「愛は地球を救う」というスローガンでおなじみ某局の24時間テレビ。始まったのは何ともう20年も前のことだ。で,このイベント用の企画として毎年手塚治虫原作のアニメスペシャルが制作されていたのだが,その記念すべき第1回作品が「バンダーブック」である。そして100万年地球の旅とサブタイトルがついたこの作品こそ,テレビアニメ史上初といってもいい熱い抱擁とキスシーンが登場した最初の作品ではないだろうか。

異星人に育てられた地球人の少年バンダー,そして妹として育った異星の少女ミムル。成長した二人は恋仲になるが,少年は自らの生い立ちの秘密を追って宇宙へ旅立つ。そしてミムルもまた……というお話。

当時(78年だ)これを見ていて驚いたのは,このふたりが夜の浜辺で抱き合って延々とキスしているしっとりしたラブシーンがぽんと出てきたからだ。考えてみるとこれはそれまでのテレビアニメではまずなかった画期的なシーンだったのだ。目からウロコが落ちるようなもので,いや〜テレビでこんなのやってもいいんだ〜と思った最初の作品(ベルばらはもっと後)であった。

LDではサイド1の14分30秒あたり。その後くりいむれもんやド変態な18禁アニメが登場して過激なラブシーンなど珍しくもなくなったが,それらはしょせんエッチが目的のジャンルであってカテゴリーが全然違う。この「バンダーブック」のラブシーンは今見ればどうということもないが,それでもジュヴナイルらしいういういしさがなかなかいい。

作品の方は手塚さんらしさがけっこう色濃く現れていて,今どきのアニメとは明らかに演出のタイプが違うことがよくわかる。これを個性と見るか古いと見るかは人それぞれだろうが,24時間テレビの手塚アニメシリーズでは1,2を争う作品であるのは間違いない。

バンダーブック HAL-808
発売元(株)ヒーロー/創美エンタテインメント