アニーの新技

■アニーよ銃をとれ■

DVDを見ていて「うーむ,これは20年前の作品になるのか」とか「もう公開から30年もたつのか」と感慨にふけることがたまにある。何年くらい前の作品を"昔の映画"と呼ぶかは人それぞれだろうが,最新映像技術の象徴のように言われていた「スターウォーズ」でさえ既に20数年も前(今は2003年)の作品である。

それだけ僕らも未来に生きるようになったわけだ。古い映画とか昔の映画という基準はだいぶ改めなければいけないほどにね。

ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した「アニーよ銃をとれ」は1950 年の作品である。もう半世紀以上前の作品だから以前の感覚では古色蒼然とした昔の映画と思ってしまいそうだが,そんなことは全くない。メリハリの利いた鮮やかなテクニカラーの映像は「映画だな〜」と見ていてうれしくなる。楽しいストーリー,耳になじんだ楽曲,立派な現役エンタテインメントだ。

ちなみに,名曲「ショウほど素敵な商売はない」はあちこちの映画で使われるのでどれが元祖か分からない人もいるだろうが,この作品(の舞台版)のために書かれた曲である。

実在した射撃の名手アニー・オークリーをモデルにしたコメディタッチの西部劇ミュージカル……なんだけど,かつての娯楽映画ってなんか余裕みたいなものが感じられていいねえ。今じゃ西部劇世界の空気を作り出すだけでもたいへんなのに,当時だと実に自然に"その感じ"が出るもんな。このあたり日本の時代劇と事情は似ているかもしれない。

田舎者丸出しの無学な娘,ただし射撃の腕は名人級のアニーが旅の一座の花形フランクに魅かれてショウビジネスの世界へ。たくみな曲撃ちでたちまちスターの座へとかけのぼる彼女をめぐって様々な騒動が……というお話なんだが,映画が娯楽の王様だった時代の香りが隙間なく詰まっていてたいへん楽しい。

そのアニーが一気に名を馳せることになる彼女の新しい演目,それが走る馬の背に立ってそのままの姿勢で的を撃ち抜きながら駆け抜けるというものだ。憧れのフランクを驚かせて振り向いてもらおうという実に恋する女らしい動機から練習を重ねた技である。凄すぎるけど。

DVDではチャプター20の56分35秒あたりから。実在のアニー・オークリーにあんな曲撃ちができたかどうかは知らない(ムリだろうなー)が,確かにあれだったら人気沸騰だろう。

この後,当のフランクは自分以上の妙技にプライドを傷つけられて一座から去ってしまうのだが,そこから先の展開はご自分で見分されたし。

アニーよ銃をとれ DL-65438
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ