ヤセ男 vs エンジェル

■チャーリーズ・エンジェル■

さて「チャーリーズ・エンジェル」である。なーんも考えずに楽しめる映画というのも絶対アリだ,と強く感じるのはこういう作品を観た時かな。どの映画もこんな風になってしまったらそれは食傷するだろうが,バラエティのひとつとしてなら大歓迎だ。そのくらい楽しい一種のアトラクションであった。

冷静に考えると盛大な無駄遣いという気もするのだが,ハリウッド娯楽映画の王道はまさにこのぜいたくな浪費ぶりの快感にあるのかもしれない。

かつてのテレビシリーズをあまり見ていなかった僕にとって,懐かしさというのはあまりない。ファラ・フォーセットのまぶしいヘアスタイルの記憶がある程度だが,それでもあのテーマ曲には心地よさがわいてくる。

「マトリックス」以後,人間のアクションシーンは明らかに様変わりしてワイヤーワークが脚光を浴びるようになったが,個人的にはそれほど好みではない。見ている間は十分楽しんでいるが,重力と加速度が感じにくいからである。人間の筋肉が生み出す動きはひとつの動作の中でもスピードが変化している。そのメリハリが体重や衝撃をリアルに感じさせるのだ。速いだけではダメ,高いだけでもダメ,そこにアクション指導の難しさもあるのだろう。

とはいえ,理屈はさておいても娯楽映画ではノリの良さも大切だ。この映画のときどき「んな馬鹿な〜」というアクションシーン,僕はとても楽しかった。

中でも序盤でのエンジェルたちとヤセ男の初遭遇戦のシーンはたいそうスピーディーで見せ方も面白く,おお,工夫してるなという楽しさがあった。跳躍しながら振り向いて発砲するヤセ男,とっさに避けつつ追撃するエンジェル,一瞬の遅滞もなくふたりが腕を組みひとりがそれを足場にジャンプしてフェンスを越えるという流れが特に光る。3人セットで戦う訓練と場数をしっかり感じさせるからだ。

DVDではチャプター10の24分32秒あたり。危ないシーンはスタントを使うにしても主役の3人はよく動く。なかなか天晴れではないか。跳び蹴りの瞬間,キャメロン・ディアスの顔が力入りまくりでかわいくなかったりするけどね。

しかしスタントを使うにせよ,出来上がったフィルムでこんな風に「ほほお〜」と思わせてくれる女優さんが我が国に何人いるかと思うとちょっとさびしい気もする。ひとくちに環境が違うとは言えないような気もするのだが,それとも機会に恵まれないだけだろうか。

余談だがこの映画,妙に日本趣味が濃くて可笑しい。見た方には説明も不要だろうが,僕などあの怪獣王ゴジラのテーマが登場したときには笑ってしまった。半分変えてはあるけどまぎれもなく伊福部大先生のあのおなじみのメロディーである。こちらはチャプター21の67分54秒あたりかな。

マンネリにならない程度に続編も実現してほしい楽しい映画だった。

チャーリーズ・エンジェル SDD-29077
発売元(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント