ロバート・ワイズのSFサスペンスを見る

■アンドロメダ...■

ロバート・ワイズ監督といえば,なんといっても「ウエストサイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック」が代表作だと思われているが,経歴を見ると実に芸域の広い職人さんだということが分かる。それもスケールの大きな。ミュージカルというジャンルだけの人ではないのである。

確かに彼のミュージカル大作は文字通り映画史に残る超A級作品だが,SFやホラー系の作品もけっこうものしているところが面白い。依頼があれば引き受けてちゃ〜んと仕上げて見せますよ,という職人根性みたいなものを感じるのだ。

その彼のSF系作品群のうち,もっともセンス・オブ・ワンダーに満ちているのが71年の「アンドロメダ...」だ。テレビではあまりリピートされない(2時間を超える長尺だしね)が,これはサスペンスに満ちたSFスリラーの傑作である。

人工衛星に付着して地球に飛来した未知の病原体の謎を追う,という展開なのだが,原作がいい(あのマイケル・クライトン)のと演出が真っ向勝負で押し通しているのとで他の同種の作品とは一線を画している。アンドロメダ・ストレインと名付けられた病原体の驚くべき性質が徐々に明らかになっていくくだりなどゾクゾクする。

見どころはいろいろあるのだが,ちょっと変わったところで病原体調査用の特別施設の描写を挙げておこう。場所が場所なだけに入所する者は厳重なチェックと滅菌処理を受けなければならない。今で言うクリーン・ルームだ。サイド2のチャプター18と19で執拗なまでに描かれる殺菌と消毒,個人識別登録の場面などに制作当時のスタッフのSF感覚を見ることができて面白い。

またサイド1のチャプター17で描かれる施設内の電子ガイド(セリフがそう言っている)の映像などもなかなかかっこいい。CGぽいがここはアニメーションだと聞いたことがある。71年だしね。真偽のほどは分からない。

いずれにせよ,今見てもその面白さは全く古びていない。コレクターたるものぜひとも入手してウエストサイド物語やサウンド・オブ・ミュージックの隣に置きたい作品だ。

ちなみに97年暮れのポケモン騒動で僕が真っ先に思い出したのがこの映画。その理由は本編を見ればすぐ分かる。なかなかリピートされないのはこのせいかもしれないなあ,というのが僕の密かな疑いである。つまり今ではおいそれと描いてはならないシーンがある,ということだ。

アンドロメダ... PILF-1658
発売元(株)パイオニアLDC