エイリアン寄生の瞬間

■エイリアン■

クリーチャー(異生物)ものの歴史を変えたといってもいい「エイリアン」はLD誕生当初の目玉商品のひとつでもあった。LDも今は亡きライバルのVHDも,少ないタイトル数でさてこれからどう戦っていこうかという時代である。まさか21世紀間近のこの時期までシリーズが続くとは誰も思わなかっただろうなあ。

この映画はギーガーデザインのインパクトもすごいが,異様な生き物が人間の体を食い破って出てくるという悪夢のようなビジョンが強烈だった。加えて逃げ場のない宇宙船の中で1人また1人と犠牲者が出ていく怖さも並ではない。亜流もたくさん生まれたが,1作でトレンドを作ってしまうのは傑作の証だろう。

さて現在(98年5月)巷ではシリーズ最新作が公開中だが,それにあわせてニューバージョンのLDセットが出ている。昔の版しか持ってなかった僕には感涙もののハイクオリティがうれしい。

あの人間の胸を食い破ってエイリアンが飛び出してくるシーンは有名だし,テレビでも何度も放映されているから詳細に思い出せる人もいるだろう。しかし生まれたばかりのエイリアンの幼生が彼(最初の犠牲者…ケイン)の顔面に貼り付くシーンもショッキングで,観客はその展開を予想していながらやはりのけぞってしまう。

今回のLDではサイド1チャプター11の36分ちょうどである。このシーン,あらためて見てみると卵が割れてケインの顔というかヘルメットに貼り付くまでの数瞬,ほとんど視認できないような短い時間でありながら,相当細かい描写がなされている。コマ送り程度ではボロが出ない緻密な映像だ。

粘液混じりの管がもつれるようにして激しく飛び出してくるのだが,いやいやさすがにぐちょぐちょぬるぬる系の嚆矢となっただけのことはある。気持ち悪い。このシーンはシリアス・ギャグとりまぜてずいぶんたくさんのパロディや模倣も生まれた。忘れがたいワンカットであるのは間違いない。

ALIENという単語はこの1作でエイリアンという読みが定着した。同時に異形の宇宙生物という意味で使われるようになってしまった。異星人という意味は確かにあったのだが,異邦人というしゃれた訳語はすっかり影をひそめてしまった。たいした影響力である。

エイリアン PILF-2565(PILF-256501)
発売元(株)パイオニアLDC