アリ・ババに恋をした

■宇宙征服■

男は女を裸にするのが好きである。これはもういくらとりつくろっても男の本音で否定できない。僕の好きなSFだってパルプ雑誌時代のイラストはSFもエロも紙一重である。美女はモンスターやマッド・サイエンティストに○○○されたり×××されるものと相場が決まっていた。当時のSFが男のものであったからだ。

この伝統(?)は映画でも同様で,しかもけっこう根深いものがあるようだ。クラシックな作品などで思いがけずそんなシーンを見て苦笑することがある。劇中唐突にサービスショット(男性向けね)とおぼしき場面が出てくるんだね。いやしょうがないなーと思いつつニヤニヤして見ている自分がいることも白状しておこう。

たとえばキャバレーとかで半裸の女性ダンサーが躍るシーンを数分やってカメラが手前に移動すると主人公たちがテーブルで話をしていたりするわけだ。

日本の昔の特撮映画には必ずといっていいほどこの手のシーンが出てきた。それはもう涙ぐましいというかあっぱれというか,会社の至上命令でしかたないんだよーてな感じでこういうシーンをもぐり込ませてくるのである。物語が南海の孤島で展開するような映画にさえ出てくるのだから笑ってしまう。心当たりのある人は手を挙げて!

しかし実は洋画でも似たようなものなのである。

「宇宙戦争」や「地球最後の日」などの名作で有名なジョージ・パル制作の「宇宙征服」という映画がある。初の有人火星探査をめぐる男たちの苦闘とストレスと挫折を描いた渋い作品だ。1954年作。

で,宇宙ステーションで働く男たちの葛藤なども描かれるのだが,途中,場面がいきなりアラビア風レビューシーンになって驚いてしまった。肌もあらわな(当時としては)美女たちが歌い踊るわけだが,実はこれがステーションの娯楽室でオンエアされている番組であったというしかけだ。ああ,このお兄さんたちこのくらいしか娯楽がないのね。

LDではサイド1のチャプター13である。この曲に「アリ・ババに恋をした」というチャプターがふってあるのだが,アラビア風といっても曲や踊っているお姉さんたちは完全にアメリカ文化のそれであり,このシーンがオリジナルのものか他のミュージカル等からの借用なのかはわからない。

今どきの映画なら詳細なクレジットが流れるからすぐに判明するんだけど,昔の作品はクレジットもシンプルでそれらしい記述も見あたらない。

他にいくらか調べてみたのだが,それに関する記述を見つけることはできなかった。クラシックな作品に通じたマニアの方々なら「あ,これはあの映画のワンシーンだよ」とすぐに指摘できちゃうのかもしれないが,僕程度のキャリアでは究明は難しいようだ。

宇宙征服 PILF-1874
発売元(株)パイオニアLDC