ケンカはダンスでやろう

■略奪された七人の花嫁■

僕がまだハリウッド・ミュージカルの面白さを知らなかった頃,一挙にその殻をうち破ってくれたのが「ザッツ・エンタテインメント」だ。黄金時代のMGMミュージカル映画のハイライト集であるこの作品のおかけで僕は未知の鉱脈をひとつ手に入れた。いやー楽しいものはいくらでもあるなあというのが実感。

そして名場面揃いのこの豪華オムニバスの中でも,とりわけ目をひいたのが「巴里のアメリカ人」と「略奪された七人の花嫁」の2作だった。どちらもリリースされるや即入手したものだが,脳天気な時代の娯楽作の王道を行っている感じで楽しかった。

ところで,世評高い「巴里のアメリカ人」はともかく,なぜ「略奪された七人の花嫁」に惹かれたかというと本編中最高の見せ場とも言えるダンス合戦(合戦というのもヘンだが)のシーンが実に躍動的でごきげんな出来だったからである。

舞台は西部開拓時代で山奥に住むむさ苦しい兄弟の嫁取り騒動のお話。既婚の長男を除いた弟たちが町の男たちと女性を取り合って対立するシーンがあるのだが,その対立がダンスで描かれるわけだ。都会者vs田舎者が女性をはさんでダンスで競うこのシーン,何度見ても楽しい。

最初はゆるやかでフォークダンスみたいにのどかな踊りなんだけど,徐々にテンポが上がりしまいにはダンスというより曲芸に近い激しい振り付けになる。そのエスカレートしていく過程がホントに楽しい。

Bless Your Beautiful Hide というナンバーだが,僕の最初期版LDではサイド1チャプター6の41分30秒あたりからの約6分半ほど。しかしこの古いLDは画面比がテレビサイズなので狭い狭い。今なら本来のシネスコサイズで入手できるのではないかと思う。試しに「ザッツ・エンタテインメント」のスペシャル版でこのシーンを見ると,左右が2倍くらい広いんではないかという気がする。

これじゃあ全然スケール感が違うなあ。

略奪された七人の花嫁 SF078-5021
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア