走るケムール人

■ウルトラQ■

テレビ番組に毎週怪獣を登場させるという画期的な作品だった「ウルトラQ」は,本格怪獣ものからミステリアスなスリラー,タガの外れたコメディまで実にバラエティに富んだシリーズだった。前途有為の学童であった私はこの番組のせいでただの怪獣大好き少年になってしまい,両親は悲嘆の淵に沈んだものだ。しかし面白かった!

その「ウルトラQ」の個性的な怪獣・怪人の中でも異彩を放っているのがケムール人である。この未来から来た異形の怪人は,サンタさんの帽子のような頭部と左右別々に動く目と変身能力を備えたキテレツなやつだった。ヴォッフォッフォッというちょっとバルタン星人に似た笑い声がなかなかよい。

走る姿も独特のアンバランスな香りがあって忘れがたく,ルックスといい,個性といい,怪人の名にふさわしいやつである。あまたいる怪人・怪物の中でここまで記憶に残るというのは見るものの潜在意識にまで訴えかける何かの持ち主だったからであろう。

LDボックス「ウルトラQ」のディスク5に収録された第19話「2020年の挑戦」において彼の勇姿を見ることができるぞ。サイド2の14分35秒あたりでエイトマンより個性的な彼の走りっぷりを確認したら19分10秒付近で桜井浩子(後の科学特捜隊フジ隊員だね)の初々しい演技も堪能しよう。ケムール人といえば夜の遊園地。そのシーンがここだ。

余談だがこのLDはあの不愉快な音声カットがなく,今では消されるかピーがかぶさる部分もちゃんと聞ける。この方がわざとらしい音声の操作よりよほど自然で気持ちよい。

それにしてもこの番組,今回再見してみて当時のスタッフの気合いの入り方にちょっと感動してしまった。テレビドラマはこの当時から一歩も進化していないかもしれないぞ。

ウルトラQ VOL.5 BELL-615
発売元(株)バンダイビジュアル