子連れで覗いたマニラ(6)
〜心安らぐひととき〜


「コンチハー。ワタシハ、ベッキーとイーマス!」
思いがけない日本語にキョトンとなりました。ここは、マニラの南、海の町、ナスブ。

郊外に出発したのは昨日。最初に訪れたのは、路線バスで2時間半、タガイタイという避暑地です。泊まりは、家族連れで賑わう“ピクニック・グローブ・コンプレックス”のコテージ。タール湖と、その湖に浮かぶ“世界一小さな活火山”が見渡せる絶好の場所です。たくさんの緑、涼しくておいしい空気、広場の空には凧が一杯です。暑さにバテバテだった私達ですが、すっかり元気を取り戻しました。
で、今日の目的地は、バスでさらに1時間ほどの“ナスブ”。高級じゃなくて、地元の人でにぎわう海の町。ところが、ヘンなところで降りてしまったんです。バス停ではなさそうだし、肝心の海はどこにあるやら。それに、だーれも歩いてないし、私達を乗せたバスが去ったあとは車1台通らない。
カンカン照りの真っ昼間。満員の路線バスで、子供達におとなしくしてもらうには昼寝しかない!と思ったわけですが・・。バスの中はよいよい、降りれば地獄ですー!
ところで、なんで降りたのかと言うと、ここがナスブだよ、一緒に降りよう、と促したアロハおじさんのせい。おじさんは、わきに待機していた“トライシクル”の運ちゃんと親しげに話しています。
“トライシクル”とは・・、バイクにサイドカーを付けた3輪タクシー。マニラでひどい目に遭った“カレッサ(馬車)”同様、観光客にはぼったくるというヤツ。
アロハおじさんが言うには、ホワイトサンドビーチは、港からバンカーに乗るんだと。港まで歩くのはムリ。庶民の味方であるジプニー(乗合ミニバス)は走ってない。だから50ペソ払ってトライシクルで行きなさいと。それにしても、10分位の距離を50ペソとは。ジプニーなら3ペソ(約8円)で行けるし、ここまで来た快適なバスだって30ペソ位。その上、港から5分位のバンカーが、やたら高そうなんです。
私達が行きたいのは、地元の人が気軽に行く海。そんなお金がかかる所であるはずはないのです。ならば、どこに行こう・・?

  私達は、近くの食堂に入って店の人に聞こうと思いました。子供達にアイスクリームを買い、店の女性に声かけたのですが、彼女は首を振って奥へ引っ込んじゃいました。通じないのか・・と残念に思っていると、奥から、人をたくさん連れて出てきたのです。そして、その中にひとり、青年が、ゆっくり英語を話してくれました。
こうして、みんなのアドバイスをもらって、ようやく海にたどり着き、そしてホテルをあたっている最中に、冒頭の日本語と会ったのです。
「ウレシイわー!マア!カワイイ子供タチ!」
そのベッキーさんと名乗る女性は、むちゃくちゃ感激してる様子。しかし、こういった場所での日本語、たやすく信用してはならん、と警戒心メキメキ。
「部屋は広いのがいーい?それとも普通?だいじょぶヨオ!安くするわ。だって日本人は私の大切なお友達なんだもの!」
この“お友達ィー!”っていう言葉もアヤシゲ?

しかし、ベッキーさんは、とってもいい人でした。働き者で、熱心なクリスチャン。そして、3人の子供の優しいお母さんで。
「日本語は、誰に習ったの?」
「私のお兄さん、日本人と結婚したね。最初はこっちに住んでいたから、おねえさん日本語教えてくれた。今はねーヨコハマ。会えなくてサミシイねー。日本語もあまり使わないから、どんどん忘れちゃうよ!だから、アナタたちを見た時、ものすごーく嬉しかったの」
7歳になるベッキーさんの息子が、うちの子供達とたくさん遊んでくれました。のびのびと遊ぶ姿を眺めながら、ベッキーさんともいろんな話ができて、本当に来て良かったと感じていました。
しかし、このあと、とんでもないことが待っていたのです・・。    (次男の事故につづく)  

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