心ゆたかな国 ミャンマー(8)〜恐怖のバス!〜


 午後2時。太陽がガンガン照りつける中、ドロドロへとへと状態で、トレッキングは終了となりました。行きは“少数民族に会える”という目的があるから頑張れたものの、帰りは口を聞く元気もなく・・。あートシを感じる!?
 しかし、このままヤンゴン行き長距離バスに乗るのが当初の計画。ふうーと休むヒマなく、シャワーを浴びると、ケンゾーさんとともに腹ごしらえ。そして、バス乗り場へと向かうのです。
 ずっと励ましてくれたケンゾーさんも、かなり疲れている様子。彼はこの街にもう1泊すると。このとき、私もそうしていれば・・帰国後の40、5度の高熱も、マラリア騒ぎ?もなかったのかもと、今では思うのですが・・。疲れたら充分に休むに限ります!
 「いやー思ったよりしんどかったね。きっと、バスに乗ったらグーグー寝れるよ」
「ほんとほんと。でも、とっても感動だった。ケンゾーさん、本当にいろいろありがとう」
私たちはしっかと握手を交わしました。本当に優しくていい人。出逢えて良かった!と思いながら・・。

 しかし、待てども待てどもバスは来ず。1時間半も待たされてやっと来たと喜んだものの、今度は席がない! このバスは座席指定で、ちゃんとキップには番号が書いてあるのに・・。
ニコニコと愛想の良いバスの係員は、私のキップを受け取ると、“今はキミの席はないけど、ちゃんと用意するからね、ここに立って待ってて”と。
5分ほど走ったところで、バスは停車しました。ガソリンを入れるために、全員を路上に降ろしスタンドへ。そして15分。再びバスは私たちの目の前に止まりました。どう見ても、誰ひとりとして減ってはいないわけです。いつ、席に座れるんだろーとため息が出る私。するとさっきのニコニコおじさんが、こっち、こっち、これがキミの席、と案内してくれました。ん?、ここの人は一体どこに?行ったのでしょう。
 その通路側の席には、補助席がありませんでした。他の座席には、かなりガタがきているけれど、どうにかくっついてはいます。その時、ひとりの男性が、私の横に来て、通路に小さな木のイスを置き、座ったのです。
『げーもしかして、この人、私の席をあけるためにこうなったんじゃー!?』
 バスは案の定満席。補助席が斜め向いていようが、背もたれがなかろうが、他のみんなとりあえず座っている状態。そんな中、私の横のおじさんは、イスに座ったり、地べたに座ったり、横にもたれたり、おおきな体を持て余す・・。
 ヤンゴンまで17時間と長いのです。しんどいだろうなーと気になってしょうがない。でも、代わってあげられる勇気も余裕も・・全くない私。
そうこう考えている内に、バスは山道に突入しました。以前、モロッコの山の中で衝突事故に遭遇したことのある私は、山道苦手なんです。でも、ミャンマー人はおっとりしていて、安全、かつ譲り合い運転。そう、不安はなかったのですがー、でもでも、どんどん道は狭くなってく・・。
 このバスの運ちゃん、ホントいい人みたいで、道を譲ってばかりなんです。だからすぐ止まっちゃう。小回りが利くであろう、小さい車との離合だって、すーぐバックして譲ってあげるんです。なんて、優しいの、って悠長なコトを言えたのはここまでの話。
 またー?・・
バスは止まりました。見れば、同じ図体あるでかいトラック。どう見ても、この2台が離合できる気がしなくって、スーと血が引いていく。今回ばかりは、運ちゃんも止まったまま。どうする? が、今度も運ちゃんは下がり始めたんです。うっそー!
 ズズッツ!
バスは舗装部分からはみ出、ズリ落ちました。
『ぎょえー!落ちちゃうよ!』
しかし、車体は右にどんどん傾いていく・・。さすがに乗客全員、信じられない面もちで立ち上がっていて・・。
『これ以上動いたら転落しちょうよぉ!』        (つづく)

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