私もインドで目が覚めた(6)〜デリー発・観光バスにゆられて〜


 ティワリさんは私の額に、自分の人差し指と中指を立て、ゆっくり押し上げました。そして
「さあ、目を閉じたら力を抜いて・・。ここに気を集中させて・・」
と。
 しかし、力を抜くどころか、ティワリさんの2本指はグイグイ押してきます。こっちも力を入れてないと後ろにコケそうで・・。
(一体これは何?瞑想に入るための方法なの?)
私の心はザワザワしてきます。それにこの狭い部屋にふたりっきり!なのです。ティワリさんの真剣さが伝わるだけに・・中断しづらくて・・それでいて体にぶら下げている全貴重品が気になってドキドキ。無になるどころか、あーこんなはずじゃあなかった・・と思うばかりです。

 重〜い沈黙の時間、どのくらい経ったのでしょう。
「・・やっぱダメだね・・ここじゃ」
というティワリさんの声。
「ふう・・」
一生懸命教えてくれたのに、私は申し訳ないやら、ほっとするやら・・。一方、彼は
「1日も早く瞑想ルームを作るゾ!」
と、確信を得たようにさわやかに語るのでした。

 「キミはその子がかわいいか?」
「ええ・・」
「じゃあ、その子の母親にならないか?」
(は?・・)
「ボクと結婚して欲しい!!」
 それは、やすらぎ?の地カジュラホー村を発った翌日。再び味わう?インドの喧噪の中、デリー発アグラ観光バスに参加しているところです。
 そのただならぬ話の相手は、私を慕う5〜6歳ぐらいの女の子のお父さん。彼女はいつも私にくっついてきて手をつなぐ、笑顔のカワイイ女の子。とっても楽しげな彼女を、両親は微笑ましく見守ります。自然に行動を共にするようになって・・そう、家族ぐるみのあたたかい出逢いの始まりだったのです。
「アナタには奥さんいるじゃない」
「それはかまわないんだ」
(ふーん、かまわないねえ)
「彼女(子供)はキミがとても気にいっている。だからボクはキミと結婚したいんだ」
なるほど、彼らはイスラム教徒。一夫多妻制だからして、十分な経済力がある人は、何人もの妻を持つ・・。私の脳裏には、まるで・・ハーレムのような図が浮かんできました。となりにいる奥さんも“妻のひとり”?
 それにしても、子供が気に入ったから・・という単純な動機も、妻がとなりにいて(妻も少し英語が分かる)、こんな風にプロポーズするのも、彼らの世界ではフツーなのかなぁ?
 へえ〜、ふ〜んと勝手な想像?を巡らしている間に、彼は私よりはるかに上手な英語を操って、アプローチの言葉を並べてきます。私が、丁寧にお断りすると、
「なぜだ、なぜだ?キミはこの子をかわいいと言ったじゃないか!」
と子供をダシに使う彼。いくら言われたってねえ・・こればっかりは・・ノーという言葉を繰り返すしかない私。何しろボキャブラリーも少ないもので・・。
 ようやく分かってくれたカナ、と思ってほっ!とした・・のはつかの間。今度は、
「じゃあ、友達になってくれ!そして日本へ呼んで欲しいんだ!」
と。よく話を聞いてみると、インド人は日本に行きたくても、ビザが取れない。日本人からの“レスポンスブルレター”とやらがあると発行してもらえる。だから・・それを送って欲しい、とゆーのです。ははは・・そーゆーこと!
 そんなこと言われても、“責任取ります”レターなんて、安易に書けないですよね。文通ならともかうも・・と口を濁す私に、彼は一言。
「じゃあ、やっぱり結婚しようよ!」
もー・・なんで話が戻っちゃうわけ?!   (続く)

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