私もインドで目が覚めた(1) 〜停電に始まって〜


場所はインドのカルカッタ。おそるおそる歩き始めた最初の夜の話。安宿の自分の部屋には、知り合ったばかりのインド人男性と私。と、そこに起きた停電。“これはヤバイ!・・でも真っ暗でどうすることもできない”と冷や汗・・。私の旅に大きな影響を与えたインドひとり旅は、こうして始まりました。

 もともとインド旅行を計画したときは、ふたり旅だったのです。まず最初が、連れのキャンセル。それなら、行き先変えようかと迷っているところに、会社の人から「久米さん、今度はインドだって!やるねえ」と励まし?一喝。なら、思い切って行くか!と覚悟を決めたのです。でも・・せめてフライトは、カルチャーショックが少ないデリー入国をと切望したにもかかわらず、日程が合わず、避けていたカルカッタ入国となるのです。

 出発は92年2月。友人からこと細やかな情報を貰っていたおかげで、到着後は早速、安宿街サダルストリートを目指し順調なスタートを切りました。
 車窓は、ボロをまとった子供たちが、車を追いかけてくる様子に始まり、交差点をゆうゆうと歩く牛の集団。2人乗りの荷車に無理矢理5、6人も乗ったチャリを汗たらたらでこぐ姿。バイクや車のバリバリ割れた騒音や、人力車を引く痩せこけた裸足の老人。次から次とインドの風景で頭が一杯です。
 タクシーは、ゴーストタウンのようなところで止まりました。ここがサダルストリートだと言うのです。乾いた土が舞い、道も建物も空もすべてが土色で、何もないし、誰もいない・・これが安宿街だと? ここに来れば、今日の宿が見つかる、と思って来た私には、呆然する光景でした。
 通りを歩いてみて、中級ホテルが3軒並ぶのが見えました。本当は、安宿もたくさんあったのに、その時は、とてもとても目に入る余裕なくってですね。で、 『今日だけ・・』と自分に言い聞かせて、最初の中級ホテルに入っていったんです。しかし満室。さらに2軒めも同じ。『ゲー、こんなに空いてないもの?・・』と不安に思った時、ひとりのインド人が近づいてきたのです。
「そこ高い高い・・もっと安いとこ知ってるよ」
「いいよ。自分で探すから」
私は3軒めに望みをかけました。でも、結果は同じ、やっぱり満室です。
 ホテルを出ると、門のところで、さっきのインド人がニコニコして待っていました。
「ボクが案内してあげるよ。見るだけ見て、ねっ」
これが彼、モハメッドとの出逢いになりました。

 彼が案内した宿は、1泊400円という安さで、意外にも小ざっぱりしたところでした。
「手数料がいるんでしょ。いくら?」
「ははは、要らない、要らない」
彼は手を振り笑ってこう一言。「よかったら、昼食に案内するよ」と。
「仕事は何をしてるの?」
「ガイドだよ。でも今日は休みだから、何にもいらない。ボクは日本人のキミと友達になりたいんだ」
と。そして彼は、街をいろいろ案内してくれました。
「ねえ、インドのお酒、飲んだことある?」
「インド人って飲まないんじゃないの?」
「人それぞれ。若い人は飲む人結構いるよ」
「へえ・・」
「そうだ、キミにインドのお酒ごちそうしよう!」
モハメッドは、いいこと思いついた!と言うように、両手を叩きました。・・そうして、夕方、安宿の前で私を降ろし、
「じゃあ・・9時に持って来るよ」
彼はそう言って、車で行ってしまったのです。
「えっ!?・・ナ、ナンカ話が違う!」
気づいた時はすでに遅し・・。彼は、“私の部屋で”飲むつもりです。それも夜9時。私はてっきり、店で夕食を食べながら飲む、と思っていたのですから・・大変なコトになってしまいました。
どうしよーと思っていると、ふと、さっきこの宿で会った日本人学生たちが浮かんできました。・・そっか彼らを呼べば・・と考えたのです。早速、彼らに話してみると即OK。苦し紛れだけど、これでほっとしてました。
 約束の時間になりました。モハメッドが来て、肝心の彼らはまだ・・。その時停電が起きたのです。(続く)     

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