〜旅を終えて〜


早いもので、帰ってきて1年数カ月がたちました。
最初は、旅の順調さをもの足りなく感じたり、反対にモロッコからはあっと言う 間に自分のペースをこわされてドキドキの連続の毎日、いろんなことを思い出しま す。
調子にのりすぎて初めての病気に、旅を続ける自信を失った時。臆病になり、自 分ひとりが好奇心の目にさらされているような孤独感でいっぱいになりました。 エジプトで、いい友達ができたのに、日本語が恋しくてたまらなくて、なぜ旅をし てるのか分からなくなってしまったこともありました。
言葉の通じないキップ売場の窓口で、“自分で買う”ことにねばり続けるときの ようなた頑張っている自分もなつかしく浮かびます。


いつも“困ること”で出逢いは始まりました。 言葉が通じない国で、自分から話しかけることは勇気がいることですが、困れば そんなこと言ってられません。自分の予算にあう宿をさがすことや、メニューがな い食堂で注文することも出逢いのきっかけです。
長い時間を過ごした乗合バスや夜行列車は、車窓という楽しみと、時には疲れを 癒してくれました。居合わせた人たちと仲良くなることは、見知らぬ国への緊張を ほぐしてくれました。

いい出逢いがあれば、そうでない出逢いもあるのです。だからこそ旅は面白い のだと私は思います。言葉が通じないからこそ、心を伝えあおうとお互い一生懸 命になる、それがいいのです。困って途方に暮れた時に、助けてくれる人が現れ るという偶然な出逢いに感動するのです。もし助け人が現れなくても、腰を据え て待つことができるのは、その出来事に真正面からぶつかる覚悟ができているか らです。起きることをありのままに受けとめることの大切さを旅は私に教えてく れたのです。


今私はこの旅が一冊の本になることを願って原稿を書いています。“旅の良さ” を伝え、ひとり旅をもっと身近に感じてもらい、たくさんの人が安全に旅をするき っかけになれたらと思っています。
私自身英語が少ししか話せないのですが、“困ること”で勇気を貰い、人に支え られ、言葉でない会話を楽しみながら、旅を続けてこれました。女性でひとりであ ることには気をつけて行動したつもりですが、恐い目にも会い、たくさん失敗もし ました。しかしいろんな巡り合わせによって感じたことや考えたことは、私の一生 の宝であり、これからの糧になると思います。
いままで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。


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