あの冬の出来事…
2002年12月14日(土)
デート、してきました。
埼玉県の山奥、秩父へと二人っきりで。
主な目的は、音楽寺というところで彼女の受験合格を祈願すること。
1時間1本のバスに乗り遅れ、
山へと続く遠い道のりを、彼女と一緒にひたすら歩いたのもいい思い出。
お参りのあとは、彼女手作りのクッキーをいただきました。
缶を開ける瞬間、二人だけのベンチに、ふわりと甘い香りが広がります。
帰りのバスの中、木枯らしに冷め切った彼女の指先は、
私の指先と重なるうちに、ゆっくりと、かすかな温度を取り戻してゆきます。
池袋に着き、一緒に夕食を食べることにします。
私は、ピザとパスタを注文します。 ――昼はコンビニのパンだけだったので――
彼女は、本当に少ししか食べません。
小食なだけでなく、睡眠も1日5時間で十分だそうです。
それでいてスポーツ万能…… 人間とは分からないものだと、彼女の笑顔を見ながら思います。
21:00、彼女をこの日のうちに家へ帰すには、あと1時間ほど余裕があります。
忘年会に賑わうレストランを出て、どこへともなく歩きます。
人のいない方へ、二人っきりになれるところに向かって、歩きます。
「Mちゃんを置いて、僕だけふっと、いなくなっちゃうかも?」そう言ってからかうと、
彼女は、左腕をそっと絡めてきます。
僕たちは首都高速の高架の下を、オレンジ色の街灯に照らされながら歩きます。
どのくらい歩いたでしょうか。
気がつくと、自分の家の最寄り駅に着いていました。
「さぁ、ここからは一人で帰るんだよ。帰り方、分かるよね?」
今まで“いい子”だった彼女が、その一言から“悪い子”に変貌します。
「……帰りたくない」
そう言って動こうとしません。
彼女が両親に、『友達と旅行に行って、翌日に戻る』と説明してきたことは知っていました。しかし……
本当なら、ここで「帰らなきゃダメ」と強く叱ってでも、彼女を帰すべきだったのでしょう。
そして、いつもの自分ならばそうしていたはずです。
でも、その時の私は、そこまで強くなれなくて、
彼女の中の“悪い子”を、生ぬるく許容してしまったのです。
悪い子二人が、いま来た道を逆戻り。
池袋に戻る頃、時計はもう23時に近づき、彼女を帰す手段はなくなりました。
私は男子寮に住んでいるので、家に一晩泊めてあげるわけにもいきません。
こうなったら、カラオケボックスのオールナイトしかない。
――私は最初から、そう思い込んでいました。
交差点にたむろする、客引きジャンパー姿のお兄さんに尋ねます。
「オールナイトは、今日土曜日なんでー、ちょっとないっすねー。」
!? そうか、しまった……
そのブービートラップは、夜遊びに慣れていない私にとって、ある意味致命的なものでした。
オールナイトがなければ、1人30分400〜500円の通常料金で7時間居座ることは――無理。
コートの上から突き刺してくる寒さの中、しばらく交差点に立ち尽くしていた私は、
全く純粋に、最後に残された選択肢を実行に移すことにしました。
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あとは皆さまのご想像にお任せして…☆
※この文章は、当時掲示板に投稿したものを、そのまま htmlに起こしたものです。
いま、彼女とはどうなったかって?
それは聞かない約束です(笑)